月末締め翌月末払いは日々多くの取引を行っている企業において広く用いられている方法です。効率的に事務処理を行えるようになるだけでなく、代金を支払う側は資金繰りをしやすくなるメリットがあります。一方で、月末締め翌月末払いでも資金繰りが苦しいというケースも散見されます。借入返済額が多かったり、在庫を抱えていたり、売掛金の回収に困っていたり、さまざまな理由で資金繰りに悩んでいる企業もあるのが現実です。
そこでこの記事では月末締め翌月末払いで資金繰りが厳しい場合の対処法について詳しくまとめました。月末締め翌月末払いの基本的な考え方からわかりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。
月末締め翌月末払いとはどういう意味?
そもそも、月末締め翌月末払いとはどういう意味なのでしょうか。まずは、基本的な考え方を整理しておきましょう。
月末締め翌月末払いとは
月末締め翌月末払いは、当月の取引によって生じた代金を月末で締めて、翌月末に後払いでまとめて支払うことを意味します。
例えば、月末締め翌月末払いで8月1日に1,000円、8月15日に2,000円、8月20日に3,000円の商品やサービスを購入した例を考えてみましょう。この場合、8月に購入した商品の合計金額は6,000円で、翌月末である9月30日にまとめて支払いを行います。
なお、締め日から支い日までの期間を支払いサイトと呼びます。支払いサイトに関しては以下の記事で詳しく解説してあるため、是非ご覧ください。
前提となるのは掛取引
そもそも、月末締め翌月末払いの前提となるのは掛取引です。
掛取引とは一定の期間内の取引金額をまとめて後払いで精算する方法で、多くの企業で取り入れられています。継続して一定の取引を行うような場合には、掛取引で商品などのやり取りをすることが一般的です。
掛取引に関連する用語についてもチェックしておきましょう。
売掛金 | 売り手側が請求できる金額 |
---|---|
買掛金 | 買い手側が支払う金額 |
月末締め翌月末払いが一般的な理由
ではなぜ掛取引においては、月末締め翌月末払いが一般的なのでしょうか?月末締め翌月末払いが広く用いられている理由についてみていきましょう。
支払う側が資金繰りをしやすくなるため
支払う側の立場に立ってみると、月末締め翌月末払いは資金繰りに有利です。
代金を支払う側は支払いサイトが長い方が資金繰りをしやすくなるので、商品やサービスを購入した時点で代金を支払うよりも、月末締め翌月末払いで支払ったほうが資金繰りの観点では有利なのです。
一方で、代金を受け取る側の立場から考えてみると、支払いサイトが長すぎると不都合が生じかねません。最悪の場合、資金が枯渇し倒産といった事態にも発展しかねないのです。
そこで、両方の企業が資金不足で問題が起きず、お互いが納得できる適切な支払いサイトとして、月末締め翌月末払いが一般的に使われているというわけです。
効率的に事務処理を行えるため
月末締め翌月末払いであれば効率的に事務処理を行うことが可能です。
ほとんどの企業ではさまざまな取引先に対して、多くの取引を行っています。そのため、請求書の発行と支払いをその都度行っていては、事務手続きが面倒なことになりかねません。
そこで、支払い方法を月末締め翌月末払いに統一することで、一定期間に行った取引をまとめて請求・支払いすることができ、事務処理を楽にすることができるのです。
月末締め翌月末払いで資金繰りがきつい場合の対処法
月末締め翌月末払いで資金繰りがきつい場合、どういった対応が可能なのでしょうか。ここでは具体的な5つの対処法についてそれぞれ解説します。
月末締め翌月末払いで資金繰りがきつい場合の対処法
法人向けの金策については「法人向けの金策とは?」の記事で詳しく紹介しています。是非ご覧ください。
請求書のカード払いで支払いを延長する
請求書のカード払いサービスを利用することで、実質的に支払いを先延ばしすることができます。
請求書のカード払いとは請求書の支払いを銀行振込ではなくクレジットカード決済に切り替えられるサービスです。カード決済の時点では銀行口座から現金は減らないので、実質的に支払いを先延ばしにすることができ、資金繰りにゆとりが生まれるという特徴があります。
請求書のカード払いのメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
支払いを先延ばしにできる 審査や手続きに手間がかからない 手数料が少ない | 利用限度額を超えた決済は行えない 長期的な資金繰り対策には向いていない |
取引先と交渉する
資金繰りが厳しい場合、支払いや入金のタイミングなどについて取引先に交渉してみるのも一つの手です。
入金時期を早めてもらう
入金予定の売掛金がある場合、取引先に入金時期を早めてもらうようお願いしてみましょう。取引先との関係性や取引先の資金繰りの状況次第ではありますが、余裕があれば応じてくれることも少なくありません。
交渉材料として売掛金の支払い期日を早めてくれた取引先には割引を行うなど、取引先が納得できる条件を提示することで合意を得られる場合もあります。
また、そもそも支払いサイトがあまりにも長い場合には、一般的な支払いサイト(月末締め翌月末払いなど)に変更してもらうお願いをしても非常識なことではないでしょう。
支払い時期を遅らせてもらう
資金繰りが苦しくどうしても支払いが間に合わない場合、まずは請求書のカード払いで支払いを先延ばしにするのがおすすめです。
ですが、カードの利用枠がないなどの理由で請求書カード払いサービスの利用が難しく、他に資金調達の手段がない場合、取引先に連絡して支払い時期を遅らせてもらうしかありません。
この場合も、先方が納得できる何らかの条件をつけるなどの対応をすることが望ましいでしょう。
ファクタリングを活用する
ファクタリングを活用することでも資金繰りを改善できます。
ファクタリングとは、保有している売掛金をファクタリング会社に売却して資金調達できるサービスのことです。
ファクタリングを利用すれば本来の入金日より前に売掛金を現金化できるため、資金繰りの改善が見込めます。
ファクタリングのメリットとデメリットは以下の表の通りです。
ファクタリングのメリット | ファクタリングのデメリット |
・売掛先企業の倒産リスクや未入金リスクを回避できる ・スピーディーに資金調達できる ・自社の信用力が低くても資金調達を行える ・負債として扱われない | ・手数料が高い ・売掛先企業の信用力に資金調達の可能性が左右される ・利用可能額が売掛債権の金額に限定される ・売掛先企業にファクタリングの利用が知られてしまう恐れがある |
月末締め翌月末払い以外の契約はできる?
掛取引では月末締め翌月末払いが一般的ですが、それ以外の支払いサイトを設定することはできるのでしょうか。
ここでは月末締め翌月末払い以外の場合について解説します。
月末締め翌月末払い以外の契約はできる?
契約によってさまざまな支払いサイトを設定できる
一般的な支払いサイトは月末締め翌月末払いですが、契約によって以下のような期間を設定できます。
- 月末締め翌々月末払い
- 10日締め当月末日払い
- 20日締め翌月末払い
例えば、月末締め翌々月末払いの場合だと、60日間の支払いサイトが設けられることになります。
支払いサイトの設定は売り手側と買い手側の企業の資金繰りに大きく影響するので、慎重に契約を締結するようにしましょう。
支払い期限が土日祝日だった場合について
決めた支払い期限が土日祝日や年末年始と重なってしまう場合があります。こうしたケースに備え事前に以下のようなルールを定めておきましょう。
- 土日祝日が支払い期限となる場合には翌営業日を期限とする
- 年末年始の場合は連休初日の前日を期限とする
こうしたルールを取引先企業に周知しておくことで支払いに関するトラブルを未然に防げます。
下請代金支払遅延等防止法によって支払い期日には規制がある
契約によって様々な支払いサイトを設定することができますが、下請業者に対する代金の支払い期日については規制が設けられているので注意が必要です。
下請代金支払遅延等防止法(下請法)という法律では、「下請代金の支払い期日について、給付を受領した日から60日以内で、かつできる限り短い期間内に定める義務がある」と定められています。つまり下請法の適用となる取引の場合、支払いサイトには60日という上限が設けられているのです。
なお、上限の60日というのは支払いサイトではなく、商品の納品やサービスの給付を受けた日を起点とした期間です。締め日からではないため、混同しないよう注意しましょう。
支払いサイトの基本的な考え方
それでは、契約を結ぶ際には支払いサイトに関してどんなことに注意すれば良いのでしょうか?ここでは、支払いサイトの基本的な考え方について整理してみましょう。
支払いサイトの基本的な考え方
回収サイトはできるだけ短く
まず、回収サイトはできるだけ短い方が資金繰りには有利に働きます。そもそも、回収サイトとは支払いサイトを売り手側の視点から見た際の呼び方で、売掛金が入金されるまでの期間を指す言葉です。
例えば、回収サイトが30日の場合だと、請求した30日後に売掛金が相手企業から支払われ資金回収できます。この回収サイトが短いと支払いがスムーズになるだけでなく早期に売掛金の回収ができるので手元の資金に余裕が生まれるのです。
支払いサイトはできるだけ長く
次に、買い手側における支払いサイトは長い方が資金繰りは安定しやすいです。支払いまでの時間を延ばせれば、手元に安定して資金を確保できるためです。
そのため、企業によっては月末締め翌月末払いよりも支払いサイトの長い、月末締め翌々月末払いといった方法を提案するケースもあります。ただし、売り手側からすると支払いサイトはなるべく短くできた方が資金繰りは改善するので、双方が納得できる支払いまでの期間を設定しなければなりません。
手形の支払いサイトは長い
なお、手形の支払いサイトは全体的に長くなる傾向にあるので覚えておきましょう。手形の場合には掛取引の支払いサイトだけでなく、手形の支払いサイトも加わります。そのため、かなり長い支払いサイトになる可能性があるのです。
例えば、月末締め翌月末起算30日手形の場合を考えてみましょう。請求締めから手形振り出しまでの期間30日に手形の支払いサイト30日が加わり、合計で60日の支払いサイトとなるのです。
手形の支払いサイトは業種によってさまざまですが、30日から120日までと幅広く設定されています。ただし、手形のサイトであっても60日以内を目途とする見直しが、公正取引委員会で検討されている動きもあるので留意しておきましょう。
月末締め翌月末払いの場合の契約書の書き方
続いて、月末締め翌月末払いの場合の契約書の書き方について解説します。
月末締め翌月末払いの場合の契約書の書き方
月末締め翌月末払いの正しい書き方
月末締め翌月末払いの場合における契約書では、具体的な支払い期限の日付を特定して記載するようにしましょう。例えば、以下のように記載します。
本製品の代金の支払い期限は、毎月末日納品締切、翌月末日支払いとする。
上記の例は納入日をもって締切計算とする場合の契約書の記載例です。いつを締め切る期日として設定して、翌月末日支払いとするのかを契約書にわかりやすく明記しましょう。
月末締め翌月末払いの間違った書き方
一方、月末締め翌月末払いの間違った書き方を確認しておきましょう。
一例として、具体的な支払い期限の日付を特定せずに「本製品の代金の支払い期限は、月末締め翌月末払いとする。」と記載してしまうことは誤りです。この記載方法では受け取り方によってさまざまな解釈ができてしまい、支払い期限に違いが生まれかねません。
例えば、製造請負契約では以下のようにいくつかの起点となる日付があります。
- 発注日
- 受注日
- 納入日
- 検査合格日
それぞれの日付は異なるため、「月末締め翌月末払い」とだけ記載しても支払いの期日が明確になっていないのです。納入日や検査合格日など、何について締切っているかが伝わるように契約書を作成しましょう。
契約書の記載項目
契約書に記載する以下の項目についても確認しておきましょう。
ポイント | |
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タイトル | 業務委託契約書・売買契約書・秘密保持契約書など、契約の内容を端的に記載します。 |
前文 | 契約書の当事者・日付・契約の簡潔な内容などが明記されます。 |
本文 | 取引の内容・相互の権利義務の内容・一般条項といった項目を記します。支払い期限・支払い期日の条項では、具体的に明記しましょう。月末締め翌月末払いとは記載せずに、締め切る期日を明確にして、誰が見ても支払い期日がわかるように明記することがポイントです。 |
後文 | 契約書作成の目的・契約書の通数・契約締結の方法などを記載します。 |
契約締結日 | 契約締結日欄には実際に契約書が作成された日付を記載することが原則です。 |
署名欄 | 署名欄にすべての当事者が調印することで契約は成立します。 |
資金繰りがきつい時にできること
「月末締め翌月末払いで資金繰りがきつい…」という場合、支払いサイト・回収サイトを見直すことももちろん重要です。しかし、資金繰りがきつい時にできることは、他にも沢山あります。資金繰りが苦しい状態を早期に改善するためにも、さまざまな解決策を試せないか検討してみましょう。
資金繰りがきつい時にできること
在庫を減らす
不要な在庫を減らせれば資金繰りの改善につながります。需要以上に在庫を抱えている過剰在庫の状態は余計なコストが発生しかねません。例えば、在庫を保管するためのスペースを確保するためにはお金がかかります。もし、賞味期限がある在庫であれば一定の期間内に販売できなければ無駄になってしまうだけでなく廃棄コストも発生してしまうのです。在庫は常に適切な数を保っておけるように管理することが大切と言えます。
商品を確保し過ぎてしまったという失敗をしないためには、在庫管理システムの導入を考えてみましょう。在庫管理システムがあれば商品の在庫情報や入荷・出荷時の数量が一覧でわかるようになるので、在庫を過不足なく管理できるようになります。在庫管理の徹底によって無駄なコストを削減して、資金繰りを改善させましょう。
経費を削減する
経費を削減できないか検討してみましょう。そもそも、経費削減とは無駄な経費をなくして費用を縮小することで、企業の利益率を高める取り組みを指します。すぐに実践できる経費削減の具体例をみていきましょう。
経費削減の具体例 | ポイント |
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交通費や出張費を削減する | 企業によっては従業員の交通費や出張費がかさんでいるケースも散見されます。対策としてはテレワークの導入やビデオ会議ツールの活用などによって、交通費や出張費を削減可能です。 |
光熱費や水道費を見直す | 毎月の固定費である光熱費や水道費を見直せると経費を削減できます。例えば、安い料金プランへの変更や、職場の照明をLEDへと切り替えるといった工夫が効果的です。 |
無駄な消耗品を買わない | 消耗品を過剰に揃えないことも大切です。従業員の人数や業務内容から、適切な消耗品の発注数であるか見直しを行いましょう。 |
ペーパーレス化を進める | ITツールを活用することでペーパーレス化を進めましょう。会議資料・伝票・帳票など、さまざまな紙媒体はデジタルで対応できます。ペーパーレス化を進めれば、用紙代・印刷費用・保管費用を削減可能です。 |
ただし、自社の商品やサービスの品質低下につながる経費削減は行わないようにしましょう。売上が下がってしまえば資金繰りが悪化する原因になってしまいます。同様に従業員の意欲や企業の信用を低下させる経費削減には注意が必要です。
遊休資産を売却する
遊休資産を売却できれば資金調達が可能です。遊休資産とは一度は事業用の資産として取得したものの、事業方針の変更や新しい機材の購入などによって、利用や稼働を停止している資産を指します。
例えば、遊休状態の以下のような資産が代表例として挙げられます。
- 土地
- 建物
- 工場
- 設備
- ソフトウェア
使用している資産は企業に利益をもたらしますが、遊休資産は利用していないので利益が発生しません。それどころか、固定資産税の対象になるため資金繰り悪化の原因になってしまいかねないのです。
特に、使用していない土地や建物を保有しているケースでは、草取りや害虫の予防といった管理の手間や不法投棄の問題にも対応しなければなりません。土地や建物の状態によっては近隣からクレームを受けてしまうリスクもあります。こうした遊休資産に対しては売却を検討するなど、早めの対処を行うことが望ましいです。
資金繰り表を作成する
資金繰り表の作成も有効な手法です。資金繰り表とは一定期間における現金の収入や支出を記録した管理表のことです。資金繰り表があれば、月の収入・支出・預金残高を確認できます。
資金繰り表を作成するメリットを以下にまとめてみました。
メリット | ポイント |
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資金不足の原因を明確にできる | 資金繰り表を見れば企業のお金の流れがわかるので、資金不足に陥る原因を特定できます。例えば、回収できていない売掛金の存在が明確になれば、具体的な対策を講じることが可能です。 |
経営戦略の判断材料になる | 資金繰り表があれば企業のお金の流れの良いポイントと反省点を、それぞれ経営戦略の判断材料として活用できます。 |
資金ショートを予防できる | 資金繰り表を活用すれば未入金の売掛金や、支払い予定の買掛金などの把握が容易です。将来の資金ショートも予想できるので、事前に対策を立てられます。 |
月末締め翌月末払いできつくなったら「支払い.com」の検討を
月末締め翌月末払いは効率的に事務処理を行えるだけでなく、支払う側は資金繰りをしやすくなるメリットがある方法です。契約内容次第では異なる支払いサイトを設定する場合もありますが、一般的に月末締め翌月末払いが多くのビジネスシーンで活用されています。
しかし、企業によっては月末締め翌月末払いを行っていても、資金繰りが苦しくなるケースも少なくありません。そうした際には支払いの期限の延長や資金調達を行えないか、さまざまな手法を比較検討してみましょう。
なかでも、請求書の支払いを最長60日先延ばしできる「支払い.com」は資金繰り改善に非常に有効です。