事業を営む方にとって、安定した資金繰りは常に意識しなければならない課題のひとつです。コロナ禍に実施された各種貸付の返済が開始し、資金繰りに頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。
そんな時は「支払いサイト」に注目しましょう。支払いサイトを変更できれば、資金繰りを大きく改善できる可能性があります。
今回は、支払いサイトの概要や基本的な考え方、調整方法などを詳しく解説します。支払いサイトの悩み解決につながるサービスも紹介しますので、資金繰りに悩んでいる経営者様や個人事業主の方は参考にしてください。
支払いサイトとは
「支払いサイト」とは、商取引における「取引の締め日から実際に代金を支払う期日までの期間」を指す言葉です。
英語では「terms of payment(支払期間)」「usance(猶予期間)」が使われます。「サイト」(sight)は英語で「視界・視野」を表す言葉で、支払いサイトは日本のビジネスシーンに特有の用法です。
支払いサイトは「掛取引」や「約束手形」などの商習慣に深く根ざしています。掛取引とは、商品やサービスを提供した後、即座に代金を支払うのではなく、定められた期間が経過した後に代金を支払う方法です。
たとえば、ある企業が別の企業に商品を提供し、その代金を30日後に受け取る約束をする場合、この30日が支払いサイトにあたります。
約束手形は、将来のある特定の日に、決められた金額を支払うことを約束する証券です。約束手形を用いる取引では、手形の振出日(発行日)から支払い期日までを支払いサイトとみなします。
一般的な支払いサイトの計算方法
業界や企業の規模、取引の形態などによって支払いサイトは大きく異なります。以下は多くの企業で用いられている支払いサイトの例です。支払いサイトを決める前に、目安となる日数や計算方法を確認しておきましょう。
一般的な支払いサイトの計算方法
30日:月末締め翌月払い
月末締め翌月払いは「30日サイト」と呼ばれる最も代表的な支払いサイトです。月単位で売掛金・買掛金を把握できるため、管理がしやすく多くの企業で採用されています。
60日:月末締め翌々月払い
月末締め翌々月払いは「60日サイト」と呼ばれます。売り手から見れば、商品の受け渡しから実際の入金までに最大で約3カ月を要するため、基本的には買い手側に有利な支払いサイトです。
そのため、取引先が親会社または子会社である場合を除いては、用いられる機会は少ない傾向にあります。
なお、下請業者への支払いに関しては、下請法によって物品や役務の提供が完了した後60日以内で、可能な限り短い期間を定めて支払うことが義務づけられています。※参照元:下請代金支払遅延等防止法
これは、下請け業者は発注元の業者に比べて不利な立場に立たされやすく、不当に支払いサイトを伸ばされてしまうと資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があるためです。
90〜120日:手形取引
支払いに手形を利用する場合は、通常の掛取引の支払いサイトに、手形の支払いサイトが加わるため、実際に現金が支払われるまでに90日〜120日程度かかる可能性があります。
手形の支払期日は自由に設定でき、振出日から1ヵ月刻みで30日・60日・90日が主です。たとえば、月末締め翌月末払いの会社が、支払いサイト60日の手形を利用する場合、30日+60日=90日後に現金が支払われることになります。
一度の支払いが高額な大口取引などでは、手形の支払いサイトは120日以上におよぶ場合もあります。売り手側からすると、現金取引と比べて売上回収までに時間がかかる点に注意が必要です。
資金繰りを安定させる支払いサイトの基本
実際に支払いサイトを決める際は、以下の考え方を基準にすると資金繰りが安定しやすくなるでしょう。売り手側・買い手側それぞれから見た適切な支払いサイトについて、詳しく解説します。
資金繰りを安定させる支払いサイトの基本
売り手側の支払いサイト(回収サイト)は短く
支払いサイトは「回収サイト」と呼ばれることもあります。これは「売り手側が買い手側から売買代金(売掛金)を回収できるまでの期間」のことであり、視点が変わるだけで、本質的な意味は変わりません。
売り手側からすれば、支払いサイト(回収サイト)が短くなるほど早く利益を得られるため、資金繰りの面で有利になります。
キャッシュフローが良好であれば、新たな事業・設備投資が可能になるなど、経営の自由度が高まるでしょう。取引先企業の業績悪化によって、回収不能に陥るリスクもゼロではないため、早めに売り上げを回収できるに越したことはないでしょう。
しかしながら、回収サイトがあまりに短期間だと、売り手側の請求書作成・送付や買い手側の事務処理が間に合わなかったり、買い手の心証が悪くなり客離れを起こしたりといった可能性があるため注意が必要です。
買い手側の支払いサイトは長く
買い手側からすると、支払いサイトは「支払いの猶予期間」です。したがって、支払いサイトをなるべく長くできれば、キャッシュフローに余裕が生まれ、資金がショートする心配も少なくなるでしょう。
できる限り支払いサイトは長めに設定したいところですが、下請法の適用を受ける場合は、60日以上に設定することはできません。また、回収を早めたい売り手との関係維持のことも考慮すると、30日〜60日程度に設定するのが現実的でしょう。
支払いサイトから財務状況の安定性がわかる
企業の財務状況の安定性を判断する際は、「仕入債務回転率」と「仕入債務回転期間」と呼ばれる2つの指標が参考になるでしょう。
仕入債務回転率は、商品を仕入れてから決済までのスピードを表す指標です。「(売上原価÷仕入債務)×100」で求められます。仕入債務回転率が低くなるほど、支払いに時間をかけていると読み取ることが可能です。
仕入債務回転率が低い=支払いサイトが長い、ということを意味するため、良い傾向にも思えるかもしれません。
しかし、一般的な適正水準は1,200%といわれているため、それを下回る場合は支払い条件の悪化や支払い遅延など、財務面でのリスクが懸念されます。
仕入債務回転期間とは、商品を仕入れてから支払いが終わるまでの期間のことです。仕入債務の回転期間は「仕入債務÷1日あたりの売上原価」によって求められます。仕入債務回転期間が長いほど、支払いサイトにゆとりがあるといえるため、望ましい状況といえるでしょう。
ただし、仕入債務回転期間は一般的には40日程度が目安とされているため、それよりも長い場合は、外部から見ると「財務状況が苦しく、支払いを遅延させている」といった印象をもたれかねないため注意が必要です。
支払いサイト(回収サイト)を短縮する方法
ここでは、支払いサイトを短縮するために有効な方法を4つ紹介します。
支払いサイト(回収サイト)を短縮する方法
取引先と支払いサイトの交渉をする
取引先と契約内容の交渉をすることで、支払いサイトを短縮できる場合があります。とはいえ、一度合意した契約内容を変更するには、相手方が納得できる理由が必要です。
信頼関係を維持するためにも、一方的な交渉はせず、合計金額の値引きや一部前払いなどを提案してみましょう。
資金不足であることを理由に支払いサイトの変更を求めると、経営状態に対する懸念を抱かれ、将来の取引に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
手形取引から現金取引への移行を交渉する
手形取引をしている場合は、現金取引への移行を交渉するのもひとつの手です。手形取引は通常の掛取引の支払いサイトに加えて、手形取引の支払いサイトも加わるため、実際に代金が支払われるまでの期間が長期化する傾向にあります。
支払方法を変更してもらうだけで、手形取引の支払いサイト分、現金化を受け取るまでの日数を短縮できます。
信頼関係を維持するためにも一部だけ現金取引にしてもらう、手形で支払う限度額を設定するなどの方法を試してみるとよいでしょう。
手形割引を活用する
手形割引は、手形に記載された支払期日よりも前に手形を現金化する制度です。銀行や手形割引業者に手形を持ち込み手続きをすると、手形の満期日までの金利や手数料を差し引いた金額が手形所持者に支払われます。
手形割引は、スピーディーに現金化できる点がメリットです。最短で即日現金化できる場合もあります。
一方で、割引を受けた手形には、割引業者に償還請求権が発生する点には注意が必要です。手形が不渡り(当座預金の残高不足により、手形の決済ができなくなること)になった場合、企業は手形割引によって得た金額や利息を割引業者に返済しなければなりません。
ファクタリングを利用する
ファクタリングは、売掛金をファクタリング業者に買い取ってもらい、現金を手に入れる方法です。
主に「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類が存在します。2社間ファクタリングは、売掛金を持つ企業(売り手)とファクタリング会社(買い手)の2者だけで行われる取引です。
この場合、売り手は直接ファクタリング会社に売掛金を売却し、ファクタリング会社から資金を受け取ります。
一方、3社間ファクタリングは、売掛金を持つ企業(売り手)、その顧客(債務者)、そしてファクタリング会社の3者が関与する取引です。
この場合、売り手はファクタリング会社に売掛金を売却し、直接資金を受け取ります。一方、顧客(債務者)は支払いをファクタリング会社に直接行います。
2社間ファクタリングは3社間ファクタリングに比べて、顧客に利用を知られにくい点や現金化が早い(最短即日〜3日程度)点などがメリットです。ただし、手数料は5%〜15%と高めに設定されていることが多い点には注意しましょう。
支払いサイトを延長する方法
取引先との関係悪化の懸念がある場合や、なるべくコストをかけずに資金繰りを改善したい場合は、クレジットカードや請求書カード払いサービスを活用して支払いサイトを延長することも検討してみましょう。
支払いサイトを延長する方法
クレジットカードを利用する
クレジットカードを利用することで、支払いサイトを延長できます。クレジットカードを使用して経費を支払えば、実際に口座から引き落としがかかるのは約1〜2ヶ月後になるため、キャッシュフローに余裕が生まれます。
支払いを先延ばしにできること以外にも、以下のようなメリットがあります。
- 利用額に応じてポイントが貯まるため経費削減につながる
- 海外旅行傷害保険や空港ラウンジなどの付帯サービスを利用できる
ただし、カード作成時には審査が必要であり、個人の信用情報や企業の業績によっては利用できない場合もあります。また、利用限度額が設定されているため、高額の決済に対応できない可能性がある点には注意しましょう。
請求書カード払いサービスを利用する
請求書カード払いサービスは、支払い期限を延長するために有効な手段のひとつです。これは支払い代行サービスの一種で、クレジットカードを使用して請求書を支払うことで、支払いを延期できます。
具体的には、サービス事業者が買い手企業に代わって取引先の口座に請求金額を振り込み、後日、支払った金額と手数料を買い手企業のクレジットカードから引き落とす仕組みになっています。
延長できる支払いサイトの日数については、クレジットカードを使用する場合と大差ありません。しかし、BtoB取引の場合、クレジットカード決済に対応していないこともあります。
請求書カード払いサービスなら、相手先企業の事情を考慮しなくても、自社の判断のみで支払いを延期することが可能です。なお、延期できる日数や手数料は業者によって異なるため、自社にとって有利な業者を選定しましょう。
支払いサイトの悩み解消には「支払い.com」
支払いサイトの改善に悩んでいる場合は「支払い.com」の利用をおすすめします。支払い.comは、請求書の支払いをクレジットカード決済することで、実質的に支払いを最大で60日まで先延ばしできるサービスです。以下で、具体的な特徴や導入事例をみていきましょう。
支払いサイトの悩み解消には「支払い.com」
支払い.comの特徴
今回紹介したような支払いサイト改善手段の大半は、取引先企業との交渉や金融機関での審査が必要になり、効果が出るまでに時間がかかることもあります。取引関係や信用度によっては、実践しにくい場合もあるでしょう。
そんな事業者様にピッタリの解決策が「支払い.com」です。支払い.comの特徴は何と言っても、その手軽さとスピードにあります。
面倒な書類の提出や、時間を要する面談などの審査が一切不要。申し込みをしてから即日で利用を開始でき、最短翌日には振り込みが完了します。振り込み名義の変更も可能なので、取引先に利用が知られる心配もありません。
手軽さとスピード、取引先に知られにくいという点では、ファクタリングも選択肢になるでしょう。しかし、2社間ファクタリングの手数料相場が5%〜15%程度であるのに対し、支払い.comは4%と低コストで利用できます。
さらに支払い.comには1つの請求書の支払いを複数のカードを利用して決済できる「複数カード払い機能」もあるため、単純に法人カードを利用する場合と比べて、資金繰りの面で大きな効果を得られるでしょう。
急な資金ニーズに対応しつつ、取引先との良好な関係を維持したいと考える事業者様は、ぜひ導入を検討してみてください。
支払いサイトの問題を解決した事例
支払い.comはサービス開始以来1年で20,000社以上の企業で導入されています。以下2つの導入事例を紹介しますので参考にしてください。
工事の遅れにより資金繰りに悩んでいたが、支払い.comを利用して400万円の支払いを60日先延ばしにでき、キャッシュフローが大幅に改善。精神的、経営的にも安心を得られた。 | <事例1>
取引先の急な倒産で月商の1/3が失われ、手元資金が枯渇。支払い.comを使い109万円の支払いを60日延期し、緊急の資金繰りに対応。現金を確保するため、経営安定後も継続利用している。 | <事例2>
支払い.comは、資金繰りの改善や入金遅延時の対策など、幅広い目的で活用できます。
FAQ|よくある質問
Q. 支払いサイトが長いとどんなメリット・デメリットがある?
支払いサイトが長ければ、キャッシュフローに余裕が生まれるため、企業を成長させるための投資に資金を活用できる点がメリットです。
一方、売り手側からみた場合は、支払いサイトが長い場合、代金回収までの期間が遅くなるため、キャッシュフローの悪化を招くデメリットがあります。
Q. 支払いサイトは法律で決まっている?
支払いサイトは法律で決められているものではなく、企業間の交渉によって決定するケースが一般的です。ただし、親企業と下請企業の関係性においては、下請法が適用される可能性があります。
その場合、役務・商品の提供から60日以内に支払いが完了するよう、支払いサイトを設定しなければなりません。
Q. 支払いサイト45日は長い?
支払いサイト45日は、「月末締め翌月15日払い」のケースを指します。支払いサイトは30日〜60日程度であれば、一般的と言えます。
まとめ
資金繰りを改善するために、売り手側の支払いサイトはなるべく短く、買い手側の支払いサイトはなるべく長くしたいものです。
取引先企業と交渉することで支払いサイトを調整できる可能性はありますが、関係悪化を招いたり、事業規模によっては下請法違反に触れたりするリスクもあります。
そんなときは、手形割引・ファクタリング・請求書カード払いサービスなど自社で取り組める対策が有効です。
中でも、最後にご紹介した「支払い.com」のような請求書のカード払いサービスは、条件を満たすクレジットカードさえあれば利用可能と、導入のハードルが低くなっています。
書類提出や審査、面談などは不要で、最短60秒で利用できる手軽さも魅力です。資金繰りに困っている企業は、悩み解決の手段として支払い.comの利用を検討してみてはいかがでしょうか。