どの業種においても安定的な企業運営を実現するためには、円滑な資金繰りは重要な要素と言えます。
しかし、調達する資金の規模や使用用途、実施すべきタイミングなどは企業ごとに異なるため自社にとって最適な資金繰りの方法やスケジュールを計画する必要があります。
そこでこの記事では、小売業における資金繰り悪化の原因や改善策、よりメリットが大きい資金繰り方法などを詳しく解説します。
小売業の資金繰りの特徴とは?
まず始めに、小売業界全体における資金繰りの特徴をおさらいしましょう。
小売業の資金繰りの特徴とは?
現金商売である小売業は資金繰りしやすい業種
小売業が「資金繰りしやすい」と言われるのには、販売商品を先に購入し、売上を得ることで仕入れコストを回収できるため、お金のインアウトがシンプルな仕組みだからではないでしょうか。
例えば、仕入れや販売の支出をすべて現金で実施し、入荷した商品の売れ残りもなく1日を終えたとすると、そのお店はその日一日の収益と同額の資金を得られることになります。
仕入れから資金を入手できるまでの期間が短いため、資金繰りを改善したい状況であれば「素早く現金化できる環境」は好都合であることが分かります。
つまり、現金商売が基本である小売業において資金繰りが危うくなる状態では、以下のような状況に陥っている可能性があることが示唆されます。
- 仕入れ費用に対して純粋な利益が足りていない
- 手元に残しておくべき現金預金が不足している
決済手段の多様化により複雑化している
日本は韓国や中国など近隣諸国と比較しても現金商売の比率がまだ高い状況にありますが、それでもキャッシュレス決済の需要は年々高まりを見せています。
経済産業省のデータによると、クレジットカードをはじめ交通系電子マネー、コード決済などのサービスにおいて小売業での導入率が高い傾向にあることがわかります。
特に近年急激な成長がみられるコード決済においては、客単価が3,000円未満の店舗からの利用率が高く、これまでキャッシュレス決済への対応を見送っていた小規模事業者にとっても現金商売が主流という環境が徐々に変わりつつある状況にあるかもしれません。
また政府としても、2025年までにキャッシュレス決済比率を4割以上に増加させることを目標としており、2022年度は36%と目標の大台まで右肩上がりの推移を維持していることから、今後もキャッシュレス決済に対応する店舗の増加が見込めるでしょう。
キャッシュレス決済への対応は顧客側としては店舗への満足度に繋がりますが、一方で初期費用やランニングコスト、手数料を店舗側が負担しなければならない側面もあります。
また、クレジットカードをはじめとしたキャッシュレス決済は、売上額が手元に入るまでにタイムラグが生じる、いわゆる「支払いサイト」が発生します。
そのため、キャッシュレス決済で支払いを行う顧客が多いほど、「小売業であれば資金繰りがしやすい」という状況ではなくなりつつあるのが現状です。
特定のシーズンには余計に資金が必要となる
扱っている商品やサービスによっては、特定のシーズンやイベントで大きく需要が伸びるものも少なくありません。
例えば、アイスクリームショップやアウトドア専門店は夏の暑い季節、お菓子屋さんはバレンタインやホワイトデー、風邪薬や使い捨てカイロは冬場などに需要が伸びるのはその一例です。
消費者からの需要が高い時期を見越してプロモーションを進めることで、年間の総収益に大きく貢献できるようになるでしょう。そのためには、過去の販売データや市場調査を入念に実施する必要があり、適切な在庫管理の能力も求められます。
仕入れのボリュームを増やすことはそれだけコストもかかりますが、懸念点はそれだけではなく需要のタイミングを逃して大量の在庫を抱えてしまうリスクも考慮しなければなりません。そのため、あらかじめ運転資金に余裕を持たせて資金管理を実施する必要があります。
競合他社との価格競争が激しい
また、小売業者は実店舗・ECサイト含めて競合が多いことも特徴です。競合との競争力を高めるには、消費者への訴求として価格競争をして販売単価を下げるという手法が一般的でしょう。
しかし、価格競争を意識するあまり収益に余裕がなくなってしまっては資金力不足に陥ります。価格面だけではないプロモーションを講じて集客力を高めつつ、収益を増加させる必要があります。
小売業に必要な資金
事業の継続的な運営にかかわる資金のことを「運転資金」と呼びますが、小売業ではどのような資金が必要になるのでしょうか。代表例をピックアップしてみましょう。
小売業に必要な資金
商品や原材料の仕入れ費用
運転資金の中には、毎月金額が変わらない「固定費」と使用状況や情勢などによって金額が変わる「変動費」の2種類があります。
このうち、商品や原材料は同じラインアップを同じ数量だけ仕入れていても、材料の高騰などによって金額が左右されることもあるため、変動費にあたります。
その他の変動費には商品の販売にかかわる販管費などがあり、仕入れ費用や外注費、販管費は売上が向上する際に増加するため注意が必要です。
人件費・水道光熱費
次に、固定費として代表的な項目となるのが人件費や水道光熱費でしょう。固定費は毎月の売上にかかわらず一定の金額が支出として計上されるため、頻繁には見直しをしなくても良い項目ではあります。
ただし、開業時のタイミングなど資金が潤沢ではない期間の場合、固定費の割合が膨らむと資金繰りが厳しくなることも大いに考えられるでしょう。そのため、十分な資金を手に入れられるまでは固定費に分類される項目の出費は抑えめに設定することがポイントです。
店舗の地代家賃
店舗を維持するために必要な固定費として代表的な項目が、地代家賃です。また、店舗前や周辺に駐車場を設けている場合は、駐車場の費用も考慮しなければなりません。地代家賃以外にも、店舗を維持していくためにはさまざまな費用が必要です。
例えば、管理費や共益費、修繕費などが挙げられます。物件によっては、看板使用料などを別途請求されることもあります。
Webサイトやチラシなどの広告宣伝費
近年はオウンドメディアやWebサイト、SNSなどのインターネットを介した広告手段も主流になっているため、広告宣伝の手法も多彩になりつつあります。
取り扱う商品やサービスのターゲット層に目を向けて、どのような媒体が宣伝効果が高いのかを見極める必要があるでしょう。
宣伝広告費以外に売上拡大に必要な費用としては、販促費が挙げられます。自社の商品を消費者に知ってもらうためには、販促活動が重要です。販促費は売上増加を目的とした費用で、展覧会への出店費用、商品サンプルの製作費用、クーポン券の配布費用などが挙げられます。
キャッシュレス決済の手数料
キャッシュレス決済というとこれまではクレジットカードが一般的でしたが、近年はクレジットカードを持っていなくても専用アプリをダウンロードすることでバーコード決済を利用できるなど、キャッシュレス化が進みつつあります。
店舗側にとっては複数の決済方法を導入するのはコストがかかりますが、顧客にとっては店舗の利用満足度の向上につながります。
そのため、特に若年層や外国人の観光客などをターゲットにしているエリアの店舗では、複数の決済方法を導入するための手数料も固定費として計上しなければなりません。
小売業の資金繰りが悪化する要因
「資金繰りしやすい」と言われる小売業において、もしも資金繰りが悪化している状況にある場合はどのような原因が考えられるのでしょうか。
小売業の資金繰りが悪化する要因
季節によって仕入れ価格や販売価格が変動する
仕入れる商品やサービスによっては、オンシーズンとオフシーズンが明確に分かれているものもあります。このような場合、売上が減少するオフシーズンに注意を向けなければならないと思いがちですが、実は急激に売上が伸びるタイミングにも注意が必要です。
なぜなら、売上に比例して仕入れのコストや人件費も増加するため、売上の回収に時間がかからないようあらかじめ調整する必要があるからです。
もちろん、売上面においてはオフシーズンではセールなどで販売価格が下降するケースに備え、需要と供給のバランスを見ながら資金繰りを行わなければなりません。
一括仕入れによってまとまった資金が必要になる
新商品の入荷や事業拡大など、一度に商品やサービスを大量に仕入れるタイミングも同様に注意が必要です。
さらに、その新商品やサービスが思ったような売上にならなかった場合、「過剰在庫」という新たなコストを抱えるきっかけにもなります。過剰在庫が発生した場合、仕入れによるコストを回収できないだけではなく、商品を店舗や倉庫内に保管するコストも念頭に入れなければなりません。
次月など直近のタイミングで売り切れるのであれば問題はないものの、在庫を抱え続けるほどに保管コストは増加するうえに、返品となった場合も別途コストがかかります。
キャッシュレス決済によって代金の回収に時間がかかる
前述の通り、近年の日本では小売業にもキャッシュレス決済の導入が進んでいます。そのため、現金商売が主流であった時代よりも、資金の回収にタイムラグが生じやすい環境に変わりつつあります。
資金の回収に時間がかかる決済手段が主流になることは、それだけ資金繰りに困難が生じやすいと言えるでしょう。資金繰りを改善するには、「支払いサイト」をなるべく短縮するのが鉄則です。
長い支払いサイトは資金繰りの悪化を招くため、キャッシュレス決済によるタイムラグには十分注意しましょう。
不良品の回収で想定外の資金が必要になる
万が一不良品を販売してしまった場合、回収のため想定外の資金が必要となるケースがあります。製造時のミスや輸送時の破損などの場合は、個別に返品・交換対応を行うのが一般的です。
しかし、設計や製造などの過誤に起因する欠陥が生じた場合は、リコール対応が行われることもあります。リコールとは、法令に基づく規定や製造者・販売者の判断によって、無償修理や返品・交換・回収などの措置を行うことです。
リコールにかかわる費用は原則製造者が負担することとなりますが、小売店などが窓口となって回収を行った場合は一時的にリコール費用を負担しなければなりません。
リコールの規模によっては多額の費用が必要となるため、資金繰りにあまり余裕がない場合は注意しましょう。
取引先が倒産して売掛金が不良債権化する
企業間取引は掛け払いの「掛取引」が一般的ですが、もしも取引先が倒産してしまった場合、売掛金を回収できないリスクが発生します。
保証型のファクタリングなど、貸し倒れのリスクを補償するサービスなどに加入していれば良いのですが、そうでなかった場合は売上がそのまま手元に入ってこない状態が続くため、資金繰りの悪化につながります。
掛取引には不良債権化のリスクが潜んでいる、ということを覚えておきましょう。
従業員が退職すると退職金の支払が必要になる
急な従業員の退職で退職金の支払いが必要となるケースも、資金繰りの悪化に注意が必要です。特に、勤続年数の長い役職者や会社役員などが退職する場合は、高額な支出が発生することもあります。
退職金は企業にとって大きな支出となるため、退職金の原資を得るために資金調達するのも一般的です。資金調達の方法としては、私募債の発行などが考えられます。
災害や事故で損失や損害賠償責任を負う
継続的な運用コストの他にも、想定外に発生した事態やトラブルへの対処が必要になることもあります。近年は世界各国で自然災害が多発しているため、災害や事故に巻き込まれない保証はありません。
このような想定外のトラブルに遭遇した場合、資金繰りに余裕のない状態では事業を再び軌道に乗せることが困難になるでしょう。
また事故や災害ではなくとも、前章でご紹介した急な従業員の退職などもあるため、予期せぬ支出があることを想定して計画を立てることは重要です。
小売業の資金繰りを改善するポイント
では、これまでの資金繰り悪化の原因を踏まえて、どのような対策を講じると改善が見込めるのかを見ていきましょう。
小売業の資金繰りを改善するポイント
支払いと回収のサイクルを短くする
現金商売が資金繰りを実施しやすかった理由としては、資金の支出から回収までの期間が短かったことにあります。そのため、資金繰り改善のためには回収までの期間をできるだけ短くすることが重要です。
とはいえ、仕入れや販売などの取り引きは取引先との信頼関係が成り立ってこそ実行されるものですから、双方が納得したうえで交渉する必要があるでしょう。
仕入れを適正化し在庫管理を徹底する
すでに過剰在庫が発生している場合、売れる見込みがもう無いと判断される在庫については年度末などのタイミングで思い切って処分しましょう。
売れないとわかっていてもそのまま在庫を残していると、物理的な保管スペースや管理コストが膨れ上がるなどデメリットしかありません。
過剰在庫を完全に無くすことは難しいかもしれませんが、これまでのノウハウや経験を生かして中長期的な在庫管理を徹底することが重要です。具体的には、商品やサービスの需要を予測・分析し、適切なタイミングで発注や仕入れを行うなど計画立案が求められます。
突発的な事態に対応できるよう流動資産を確保する
「流動資産」とは、さまざまな資産の種類のうち短期間で資金化が可能なものを指します。その名称の通り資金化までの流れが流動的であることが特徴で、一般的には1年以内に現金化できるものがこれに含まれます。
具体的には、売掛金や受取手形などの「当座資産」や、商品や製品などの「棚卸資産」のほか、「前払金」や「貸付金」などが該当します。
もしも不測の事態が発生して負債を負ったとしても、短いスパンで資金化が可能である流動資産を保有していると、資金繰りを悪化させずに対処することが可能です。
小売業の資金調達方法
今日、資金調達にはさまざまな方法がありますが、だからこそどの方法が自社にとってベストなのかをしっかりと見極める必要があります。ここからは、小売業との相性が良いとされる資金調達方法をピックアップして紹介します。
小売業の資金調達方法
請求書のカード払いによる支払期間の延長
請求書によるカード払いは、取引先から受け取った請求書に対して自社名義のクレジットカードで決済を行う、支払い代行サービスの一種です。クレジットカードの締め日から引き落とし日までの支払いサイトを利用し、引き落としまでの期間を「先延ばし」できることが特徴です。
この先延ばしの特徴を利用して、借り入れによる資金調達をしなくとも資金繰りの改善が期待できます。
また、取引先へは事前に指定した支払いタイミングでサービス事業者が振り込み作業を代行してもらえるため、改めて支払いの日時を交渉したり、取引先にクレジットカード払いへの変更を交渉したりという必要もありません。
代表的なサービスとして、「支払い.com」が挙げられます。
ファクタリングの利用
ファクタリングは、本来支払期日にならなければ現金化できない売掛債権をファクタリング事業者に売却することで、期日よりも早く現金化できる資金調達方法です。
融資のように借り入れによって資金を得る方法ではないため、信用情報に影響を受けることなく、申し込みから数日程度で現金化できる即時性の高さが魅力です。
また、買い取りが可能な債権は掛取引にかかわる売掛金だけではなく、現金化に時間がかかるクレジットカード債権にも対応しています。クレジットカード払いが多いECサイトの取引などに活用できるでしょう。
ただし、ファクタリングは売掛債権の金額を上回る資金調達はできません。また、ファクタリング事業者によっては一度に現金化できる上限額が設定されているため、例えば現金化したい金額の全額を受け取れないケースも考えられます。
クラウドファンディングの実施
クラウドファンディングは、達成したいプロジェクトの内容を募集サイトに掲載し、プロジェクトの内容に賛同する不特定多数の出資者から資金を募る方法です。
新製品のテストマーケティングのために利用している比較的小規模なケースから、施設の改修や増設に伴う数千万円単位の資金を調達する大規模なケースまで、さまざまなプロジェクトの募集が行われています。
募集形態は大きく分けると「購入型」「寄付型」「金融型」の3種類があります。
「購入型」は一般消費者からも支援が可能であり、出資をする金額によってさまざまな特典を受け取れる「リターン」の仕組みがあることも一般的です。
「寄付型」はその名の通り寄付として出資をするためリターンの制度はなく、災害による復旧活動プロジェクトなど慈善活動に用いられます。
「金融型」はソーシャルレンディングとも呼ばれ、個人投資家による小口の資金を募り、まとめて融資を行う方法です。融資の形態であることから、支援者にとっても金銭的なリターンを得られます。
金融機関のプロパー融資
プロパー融資とは、法人の信用に基づき金融機関から直接融資を受ける方法です。プロパー融資は審査が厳しく、法人の信用力が重視されるため小規模事業者は利用が難しいかもしれません。
ただし、契約ごとに金利や借入上限額が決まるオーダーメイド型のプロパー融資は、大規模かつ長期的な資金調達を行うには必須の存在です。
借入のハードルが高いのは事実ですが、新規出店を始めとした事業拡大を目指す場合は、プロパー融資の利用も検討してみましょう。
政府系金融機関の融資
プロパー融資をはじめ、銀行融資は借り入れの上限額が高く低金利というメリットがある一方で、融資先の信用情報を重視し審査が厳格です。そのため、中小企業や小売業者にとっては条件が不利になってしまう傾向があります。
一方で、政府が運営している「日本政策金融公庫」は、銀行融資に匹敵する金利でありながら、個人事業主や中小企業などを対象としたさまざまな融資制度を提供しています。
例えば、中小企業事業に含まれる「企業活力強化資金」の制度は、「卸売業、小売業、飲食サービス業、サービス業を営む方」を対象としています。
信用保証協会の融資
信用保証機関は、主に社会的信用力の低い中小企業・小規模事業者に向けて、資金調達を実施する際に保証人として融資契約までのサポートを提供する機関のことを指します。
「信用保証料」をあらかじめ信用保証協会に支払うことで、万が一貸し倒れが発生した際に信用保証協会が資金提供元への立て替えを行い回収リスクを軽減させる仕組みです。
全国各地に指定機関が存在し、どのような保証が受けられるのかは地域によって異なりますが、ニーズや事業規模などによって最適な保証内容を提案します。ただし、信用保証を受けられる企業は、業種によってそれぞれ明確に条件が定められています。
例えば小売業の場合、資本金は5,000万円以下もしくは従業員数が50人以下(小規模事業者の場合は5人以下)のどちらかの条件に該当する必要があります。詳細な条件は制度融資を提供する自治体によって異なるため、申し込みの際には事前に確認しておきましょう。
ノンバンク系のビジネスローン
ノンバンクのビジネスローンは、金融機関以外の事業者から受けられる事業融資のことを指します。具体的には、消費者金融やリース、クレジットカード、信販企業などが該当します。
社会的信用力の低い個人事業主や実績の少ない小規模企業も対象とされており、最短で即日に借り入れが可能になるサービスもあるなど、一刻も早く資金繰りを改善したい人には大きなメリットと言えます。
一方で、金利が高く設定されることが多い傾向にあるほか、最大限度額が1,000万円程度までの指定がなされていることが多いため、最終的な返済額の負担を考慮する必要があるでしょう。
融資の審査を通りやすくするポイント
円滑な資金調達を実現するためには、出資元から信用を得られるかどうかが重要なポイントになります。ここからは、融資を受ける際に審査を通過しやすくなるための工夫を紹介します。
融資の審査を通りやすくするポイント
希望融資額と資金の使途を明確化する
審査を通過しやすくするためには、希望融資額と資金使途を明確化しましょう。希望融資額については、どうせ融資を受けるなら多めに借りたい、という方もいるかもしれませんが、適性な金額だけを希望するようにします。
なぜなら、融資の目的と照らし合わせて過剰な融資額を希望すると資金の流用を警戒されて審査が厳しくなるからです。
融資の審査では、資金が「何のために・いくら」必要なのかが重視されます。資金使途を明確化し、必要十分な金額を希望することが重要です。
しっかりとした事業計画を作成する
融資を申し込む際に必要となる事業計画書では、融資する資金の適正金額と使用用途を確認し、融資の可否を判断します。そのため、内容があいまいな事業計画書では、融資を受ける必要性を出資元にうまくアピールできません。
希望融資額の根拠や使用用途を明確にするためにも、事業計画書には融資によって得られた資金を用いてどのような事業成長・拡大を目指しているのかを具体的に示しましょう。
例えば、設備資金としての融資を希望しているのであれば、その設備によって得られる技術・プロダクト・サービスの内容や市場調査を含めた顧客層の選定、ターゲットに対するアプローチ方法、競合他社との差別化のポイントなどを盛り込みます。
また、販売チャネルやプロモーション方法を基に、成長曲線を描く透明性のあるビジネスモデルを提示することが重要です。
自社の財務状況を改善する
融資審査を実施する上でもっとも大切なポイントは、「その人にはどれだけの返済能力があるのか」という点です。現在の経営状況や返済財源の目安は決算書に記載された情報から判断されるため、決算書に記載する内容の透明性を担保することは重要です。
例えば、金額としては少額であったとしても赤字が発生していたり、売掛金などの取引内容の詳細が判別できなかったり、仮払金としての計上金額が多かったりといった内容は不安材料として見なされるため、良い印象は持たれないでしょう。
反対に、自己資金が潤沢にある、資産が負債を上回っている、キャッシュフローの状況がプラスである、などの内容を記載することで、財政状況に問題がないことをアピールしやすくなります。
事業の健全性を主張する
返済能力の他に、「企業としての社会的信用」があるかどうかも、ウェイトの大きな審査基準です。
具体的には、法人税や事業税などの税金や各種公共料金の支払いを滞納している、既にカードローンや消費者金融から多額の借り入れがある、などの場合は「信用情報に問題がある」と評価されやすくなります。
また、信用情報の精査は融資の申し込み時点だけではなく、過去数年にさかのぼって行われる点も注意が必要です。そのため、「もう返済は終わってるから大丈夫」と思っていると、気づかないうちにマイナスの印象を与えることになりかねません。
資金繰りを改善するには、原材料や在庫の管理を徹底することも重要です。例えば、原材料を発注するには、それだけ資金が必要です。
保管するにも、保管場所の確保や一定の管理コストなどがかかります。保管期間が長くなれば劣化が進み、ロスが発生する恐れもあるでしょう。このようなコストを抑えるためにも、管理を徹底し、原材料の発注は必要最低限にする必要があります。
在庫についても同様です。売れない在庫を抱えてしまうと、保管や棚卸しに一定のコストがかかります。保管している間に劣化は進み、商機を逃した商品は消費者のニーズも低下してしまうでしょう。
このように、不良在庫となった商品はマイナスにしかならないため、早めに廃棄するか在庫買取業者などに引き取ってもらうのが得策です。
必要書類をミスなく作成する
融資を申し込む際には、出資元が求める必要書類を抜けや漏れがないように提出することが重要です。
金融機関などに書類のフォーマットが用意されているものもありますが、事業計画書や決算書などはひな形が決められておらず、自社で作成する必要があるため余裕をもって準備しておきましょう。
詳細はそれぞれの金融機関などによって異なりますが、以下に示した書類の情報から融資の可否を審査します。
- 事業計画書(経営改善計画書とも)
- 決算書
- 見積書
- 借入申込書
- 履歴事項全部証明書
- 返済計画書
- 創業計画書(事業創業時の場合)
小売業の資金繰りを良好に保つ秘訣
最後に、資金繰りを円滑に実施し、余裕のある企業運用を継続させるためのコツを解説します。
小売業の資金繰りを良好に保つ秘訣
資金繰り表でお金の流れを可視化する
とにかく焦って資金を確保しようとするよりも、まずは客観的に現在のお金の流れを把握してみましょう。お金の流れを可視化するには、「資金繰り表」を用いて収入と支出を月ごとに分類・集計し、予算と照らし合わせながら過不足や現金の動きを確認します。
そもそも、会計上の金額と実際のキャッシュには差が生じています。売上として手元に入った資金がすべて純利益になるわけではないため、会計上では黒字であってもキャッシュが不足し、「黒字倒産」という状態に陥りかねないのです。
資金繰り表を作成することで、こうした会計上とキャッシュのギャップを把握し、資金繰りが厳しくなりそうなタイミングやその原因をいち早く特定できるようになります。
また、資金繰り表には決められたフォーマットや作成方法の基準はないため、エクセルなどの一般的なソフトウェアでも簡単に作成・管理が可能です。
必要な場合は早めに資金調達を行う
資金繰りを円滑に行うためには、「入金はなるべく早く・支払いはなるべく遅く」することが鉄則です。
売掛金などの回収が遅れている場合は早めに入金を促し、継続的に資金繰りに苦慮しているようであれば支払いサイトの見直しを取引先と交渉しましょう。
反対に、商品の仕入れなどで支払いが発生している状況では、なるべく入金を遅らせるように支払期日の調整を行いましょう。
交渉による支払期日の後ろ倒しができない場合は、クレジットカードで支払いを行うと取引先と交渉せずに引き落としのタイミングをずらすことが可能です。
「支払い.com」で小売業の資金繰りを改善しよう
資金繰りが悪化し始めると資金調達の方法ばかりに意識が向いてしまいがちですが、一度資金調達が成功したとしてもそれは根本的な解決には至っていません。
何度も資金繰りが悪化してしまうと信用情報に影響し、場合によっては融資を断られてしまうケースもあるでしょう。
もしも支払いサイトの交渉などができない取引があってお困りの方は、クレジットカードさえあれば請求書の支払いを先延ばしにできる、即日利用も可能な支払い.comのサービスをご検討ください。