事業を安定して運営していくためには、適切なタイミングで資金調達を行うことが重要です。通常の事業運営以外にも、設備投資や先行投資なども必要となるため、すべてを自己資金だけで賄っている企業の方が少ないかもしれません。特に、創業間もないスタートアップベンチャーや、事業が拡大期にある中小企業などは、資金ショートに十分注意する必要があります。
なお、資金調達は金融機関などから融資を受けることも一般的ですが、融資を受ける際に気をつけなければならないのが手数料の存在です。融資の手数料は金利に含まれており、あわせて「金利手数料」などと呼ばれることもあります。金利手数料自体は融資金額に対し数%程度ですが、返済が長期間に及ぶ場合はこの負担も馬鹿になりません。当記事では、融資を受ける際に必要な手数料と、資金調達を成功に導くポイントを詳しく解説します。
資金調達方法ごとの手数料
冒頭でもお伝えしたとおり、融資を受ける際は金利とあわせて一定の手数料がかかります。「金利手数料」などと呼ばれ、毎月の返済時に金利と一緒に支払うのが一般的です。
なお、金利手数料の相場は融資の方法によって大きく異なります。手数料自体は融資金額に対し数%程度ですが、長期かつ高額な融資の場合は数%でも馬鹿になりません。ここでは、資金調達方法ごとの手数料相場をご紹介します。
資金調達方法ごとの手数料
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫は、スタートアップベンチャーや中小企業などを対象にさまざまな融資を提供している政府系金融機関です。一般的な融資を受けにくい若者やシニア、女性の起業家に対しても積極的に融資を行っています。
創業時に利用できる新創業融資制度や、経営改善に必要な資金を得られる小規模事業者経営改善資金(マル経融資)、社会経済の変化によって一時的に業況が悪化している経営者に向けた経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)などが有名です。
担保にできるような資産や人的担保に乏しい小規模事業者でも利用しやすいよう、無担保・無保証人で利用できる融資制度が充実しており、金利手数料についても低額に設定されています。日本政策金融公庫の金利手数料相場は下記の通りです。
融資制度 | 金利手数料(年利) |
---|---|
担保を不要とする融資 | 0.70~3.20% |
新創業融資制度(無担保・無保証人) | 1.00~3.50% |
担保を提供する融資 | 0.30~2.85% |
都市銀行・メガバンクの融資
融資を受ける際に一番に検討するのが、都市銀行からの融資ではないでしょうか。都市銀行はメガバンクとも呼ばれ、財務基盤が安定していることから大口の融資にも対応しているのが特徴です。
都市銀行であれば、最低水準の金利手数料で長期かつ高額の融資を受けられます。一方、担保や保証人を付けずに都市銀行が独自の責任で直接行うプロパー融資は、審査が非常に厳しく創業間もないスタートアップベンチャーや個人事業主などは利用しにくいのがデメリットです。
小規模事業者などで審査に不安がある場合は、信用保証協会の保証付融資を利用する方法もあります。保証付融資は、融資に際し信用保証協会が信用保証を提供するため、圧倒的に審査が通りやすくなるのが特徴です。ただし、別途信用保証料を負担しなければならないため気を付けましょう。都市銀行の金利手数料相場は下記の通りです。
融資制度 | 金利手数料(年利) |
---|---|
プロパー融資 | 1.00~3.00% |
保証付融資 | 1.50~3.00%+信用保証料0.45~2.20% |
地方銀行・信用金庫の融資
スタートアップベンチャーや中小企業が利用しにくい都市銀行に対し、地方銀行や信用金庫は小規模事業者でも利用しやすい金融機関です。特に、利益が最優先の営利企業である都市銀行とは異なり、信用金庫は地域社会の発展を目的とした金融機関でもあるため、個人事業主や中小企業でも利用しやすい金融商品を数多く提供しています。
一方で、都市銀行ほど規模が大きくないため借入限度額は低く、金利手数料は高めなのがデメリットです。地方銀行も地域密着型の金融機関で小口融資も積極的に行っていますが、金利が低い分信用金庫より審査は厳しくなります。地方銀行・信用金庫の金利手数料相場は下記の通りです。
金融機関 | 金利手数料(年利) |
---|---|
地方銀行 | 1.50~3.50% |
信用金庫 | 2.00~5.00% |
ビジネスローン
民間金融機関の中には、ビジネスローンと呼ばれる金融商品を提供している金融機関もあります。ビジネスローンは事業性評価融資とも呼ばれ、事業性資金の貸付を目的に銀行独自の責任で行うプロパー融資の一種と考えることも可能です。
ビジネスローンは融資可否の回答が比較的早く、原則無担保で利用できます。一方、審査は決算書に基づき実施されるため、一定期間の事業実績と良好な財務状況が必要です。過去の業績を重視するプロパー融資に対し、事業性評価融資は将来性に着目して行う融資と区別できます。
プロパー融資ほど審査は厳しくありませんが、その分金利手数料が高い点には注意しましょう。銀行が提供するビジネスローンの金利手数料相場は下記の通りです。
金融機関 | 金利手数料(年利) |
---|---|
都市銀行 | 1.00~14.00% |
地方銀行 | 3.00~15.00% |
ノンバンク系の融資
ノンバンクとは、銀行や信用金庫とは異なり預金業務を行わず、個人や企業などに対し資金を貸し出す与信業務を中心に行っている金融機関です。具体的には、消費者金融・信販会社・クレジットカード会社が3大ノンバンクといわれており、それぞれ独自の金融商品を展開しています。
銀行と同様にビジネスローンも提供しており、審査が優しく最短即日で融資を受けられるため、急な資金調達にも最適です。一方、銀行のプロパー融資などに比べるとはるかに金利手数料が高いため、長期間借り入れると金利負担が大きくなる点に注意しましょう。ノンバンク系ビジネスローンの金利手数料相場は下記の通りです。
金融機関 | 金利手数料(年利) |
---|---|
ノンバンク | 5.00~18.00% |
ファクタリング
ファクタリングとは、商品を先に引き渡し後から代金を受け取る、いわゆる掛取引で生じた売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらい現金化するサービスです。通常売掛債権は支払期日まで現金化できませんが、ファクタリングを利用することで支払期日前に現金化できます。
掛取引では商品の引き渡しから代金支払いまでの支払いサイトがしばしば資金繰りを悪化させるため、支払いサイトに関わらず売掛債権を即現金化できるファクタリングは資金繰りの改善に効果的です。
ファクタリングでは売掛先の信用力が重視されるため、売掛元の財務状況や信用力に問題があっても利用できるというメリットがあります。一方、買い取りには一定の手数料が生じるため、継続的に利用すると収益性が悪化する可能性もある点はデメリットです。
ファクタリングにはファクタリング会社と売掛元の2社で行う2社間ファクタリングと、売掛先の合意に基づき行う3社間ファクタリングがあります。ファクタリングの買取手数料相場は下記の通りです。
ファクタリング | 買取手数料 |
---|---|
2社間 | 10.00〜20.00% |
3社間 | 1.00~10.00% |
手形割引
手形割引とは、支払期日前の約束手形を銀行や信用金庫、手形割引業者に買い取ってもらい現金化する資金調達方法です。通常約束手形は支払期日まで決済できませんが、一定の手数料を支払うことで割り引き(買い取り)してもらい、支払期日前に現金化できます。
手形割引では手形振出人の信用力が重視されるため、自社の経営が思わしくない場合でも利用できる点はメリットです。一方、手形割引には一定の手数料がかかるため、継続的に利用すると収益性が悪化する可能性があります。また、約束手形が万が一不渡りとなった場合は、利用者が全額弁済しなければなりません。
手形割引の割引手数料の相場は下記の通りです。
手形割引 | 割引手数料 |
---|---|
銀行 | 2.00~3.50% |
信用金庫 | 2.50~4.50% |
手形割引業者 | 2.50~15.00% |
自治体の融資
各自治体が、当該地域で創業する方や事業を営む方を対象に融資を行っているケースもあります。例えば、地方自治体・地元金融機関・信用保証協会が協力して提供する制度融資などは、スタートアップベンチャーや中小企業にも最適な資金調達方法です。
制度融資では、融資自体は地元の金融機関が実行しますが、信用保証協会が信用保証を提供し、地方自治体は貸付資金の一部預託や信用保証料の一部補助などを行います。一定の信用保証料は負担しなければなりませんが、信用保証によって審査のハードルは大幅に下がり金利も低いため、信用に乏しい小規模事業者にはおすすめの資金調達方法です。
融資の概要は自治体によって異なるため、利用する場合は必ず各自治体のWebサイトなどで詳細を確認しましょう。例えば、東京都が提供する東京都中小企業制度融資の金利手数料相場は下記の通りです。
制度融資 | 金利手数料(年利) |
---|---|
東京都中小企業制度融資 | 1.90~2.50%+信用保証料0.27~1.72% |
少人数私募債の発行
少人数私募債とは、50人未満の小人数を対象に社債を発行する資金調達方法です。対象がプロの投資家ではなく関係の深い取引先や親類縁者となるため、非常に簡易な手続きで社債を発行できます。
私募債は負債に該当するため必ず返済しなければなりませんが、銀行の融資などとは異なり償還日や金利などは発行者が任意に決定することが可能です。償還日まで毎月の返済がない点はメリットですが、償還日には原則一括返済する必要があるため気をつけましょう。
少人数私募債は発行から償還まで自前で行うため、手数料などは必要ありません。金利についても自由に設定できますが、一般的な金利相場は下記の通りです。
少人数私募債 | 金利(年利) |
---|---|
一般的な相場 | 2.00~5.00%程度 |
固定資産の売却
社宅や保養所、工場や事業所、使っていない設備機械などの遊休資産を売却し、資金調達する方法も一般的です。最近では、極力固定資産を持たずに経営のスリム化を図る動きも活発になっています。
ただし、固定資産を売却する際はいささか面倒な減価償却費の会計処理が必要です。また、対象が不動産の場合は仲介手数料が、その他の固定資産の場合は売却金額に対して消費税がかかるため注意しましょう。さらに、固定資産の売却で利益が生じた場合は、利益に対し法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税がかかります。個人の場合は、譲渡所得税が課されるため気をつけましょう。
固定資産の売却でかかる手数料や税金の例は下記の通りです。
- 仲介手数料
- 消費税
- 法人税
- 地方法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 譲渡所得税
など
リースバック
リースバックとは、事業に必要な資産を一旦リース会社に売却して資金を調達し、売却した資産をリースすることで事業を継続する方法です。設備機械や営業車両を売却することで一時的に資金は確保できますが、事業を継続するにはそれらを賃貸しなければならないため、利用に際しては損益を慎重に検討する必要があります。
なお、不動産をリースバックする場合は仲介手数料が必要です。さらに、売却する際の登記変更費用や印紙税、賃貸する際の敷金・礼金や家賃保証料などがかかります。不動産のリースバックにかかる主な費用は下記の通りです。
- 売却時にかかる費用
- 印紙税
- 登記変更費用
- 抵当権抹消費用
- 仲介手数料
- 事務手数料
- 譲渡益にかかる各種税金
- 賃貸時にかかる費用
- 敷金礼金
- 家賃保証料
- 火災保険料
- 事務手数料
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、商品やサービスを始めとしたプロジェクトの賛同者を募って、一定のリターンと引き換えに出資を受ける資金調達方法です。
一般的には、商品・サービスと引き換えに出資するインターネット通販のような購入型がよく知られていますが、特定のリターンが伴わない寄付型や、返礼品に対し出資するふるさと納税型なども人気を集めています。投資の世界では、融資型や株式投資型、ファンド型のクラウドファンディングも一般的です。
なお、クラウドファンディングには一定の手数料がかかります。クラウドファンディングの手数料相場は下記の通りです。
クラウドファンディング | 手数料相場 |
---|---|
一般的な相場 | 10.00~20.00%程度 |
補助金
稼ぐ力の弱いスタートアップベンチャーや中小企業にとって、毎月の返済は大きな負担です。そこで、返済の必要がない資金調達方法を選択するのも有効な方法です。例えば、国や地方自治体が交付している補助金を利用すれば、返済の必要がない資金を調達できます。創業間もない小規模事業者でも利用しやすい補助金の例を挙げると下記の通りです。
など
国や地方自治体が交付する補助金の場合、申請をすべて自前で行えば手数料等は一切かかりません。一方、申請を代行業者に依頼した場合は、着手金や成功報酬がかかります。着手金・成功報酬の相場は下記の通りです。
申請代行 | 着手金・成功報酬の相場 |
---|---|
着手金+成功報酬 | 着手金2~5万円程度+成功報酬10~15%程度 |
成功報酬のみ | 15~25%程度 |
助成金
返済が不要な資金調達方法には、助成金もあります。助成金は厚生労働省が管轄しているものが多く、雇用促進や職場改善などを目的として交付されるのが一般的です。先ほどご紹介した補助金は経済産業省が管轄しているものが多く、事業拡大や設備投資などを補助する目的で交付される点が助成金とは異なります。
創業間もない小規模事業者でも利用しやすい助成金の例を挙げると下記の通りです。
など
補助金と同様、申請をすべて自前で行えば手数料等はかかりません。一方、代行業者を利用した場合は着手金や成功報酬がかかり、相場については概ね補助金と同程度となっています。
申請代行 | 着手金・成功報酬の相場 |
---|---|
着手金+成功報酬 | 着手金2~5万円程度+成功報酬10~15%程度 |
成功報酬のみ | 15~25%程度 |
エンジェル投資家からの出資
エンジェル投資家とは、創業間もないスタートアップベンチャーなどの新興企業に出資する個人投資家です。未上場の会社に出資し、将来その会社が株式上場した際にキャピタルゲインを得ることを目的としています。
エンジェル投資家からの資金調達はエクイティファイナンスと呼ばれ、資本性資金に該当するため返済の必要がなく金利の負担も不要です。一方、株式保有比率に応じて投資家が会社経営に関与してくる可能性があること、本業と並行して株式戦略も検討しなければならないこと、などのデメリットには気をつけましょう。さらに、出資を受けた場合は株主配当という形で利益を還元する必要があるため、いわゆる株主資本コストがかかる点にも注意が必要です。
ベンチャーキャピタルからの出資
エンジェル投資家からの出資と並んで代表的なエクイティファイナンスは、ベンチャーキャピタル(Venture Capital:VC)からの出資です。VCは、将来的な成長が見込める未上場の新興企業に出資する投資会社です。エンジェル投資家と同様、株式上場時のキャピタルゲインを得ることを目的としています。
VCからの出資はエクイティファイナンスに該当するため、返済の必要がなく金利の支払いも不要です。一方、株式保有比率によっては経営に干渉される恐れがあること、株式戦略にも一定の時間とコストを割かなければならないこと、株主配当を始めとした株主資本コストがかかること、などがデメリットとして挙げられます。
法人カード
法人や個人事業主向けのクレジットカード、いわゆる法人カードを利用して資金調達するのも手軽な方法です。例えば、法人向けカードローンを利用することで、簡単に資金調達できます。銀行が発行するクレジットカードによるカードローンは事業性資金への流用が認められないケースもありますが、ノンバンクが発行するクレジットカードは事業性資金への流用が認められているケースがほとんどです。
借入限度額は低く借入期間も短い点はデメリットですが、ATMで即日利用できるため急な資金調達には最適な方法といえるでしょう。ただし、銀行のプロパー融資などに比べるとはるかに高い金利手数料がかかる点には注意が必要です。
より手軽に法人カードで資金調達するには、「支払い.com」を始めとした請求書カード払いサービスを利用する方法もあります。請求書カード払いサービスを利用すれば、わずかな手数料で請求書の支払いを先延ばしにすることが可能です。
法人向けカードローンと後払いサービスの金利手数料相場は、下記のようになっています。
法人カードによる資金調達 | 金利手数料 |
---|---|
法人向けカードローン | 3~18%(年利) |
請求書カード払いサービス | 3〜4%程度 |
資金調達が必要になる場面
事業を安定運営していくためには、しかるべきタイミングで資金調達する必要があります。特に、まだ稼ぐ力の弱いスタートアップベンチャーにとって、資金調達は喫緊の課題です。ここでは、事業を運営していく上で資金調達が必要となるタイミングについて解説します。
資金調達が必要になる場面
開業
資金調達が必要となる1つ目のタイミングは、開業時です。開業する際は、店舗・工場・事務所の取得費用、従業員の雇用、原材料の仕入れ、製造ラインの構築、集客のための宣伝広告費などさまざまなコストがかかります。
例えば、店舗や工場、事務所などを賃貸する場合は、一般の住宅より敷金・礼金や家賃保証料が高額になるケースが一般的です。エリアや物件によっても異なりますが、家賃の10ヶ月分以上は見込んでおいた方がよいでしょう。
また、安定して利益を確保できるようになるまでは時間がかかるケースもあるため、その間の家賃や人件費を賄うために半年程度の運転資金も確保しておかなければなりません。
事業拡大
資金調達が必要となる2つ目のタイミングは、事業拡大時です。事業が拡大しているときは、原材料などの仕入れ費用や従業員の人件費などが増加します。また、商品の販売に関わる販管費も増加するため、いわゆる増加運転資金を確保しなければなりません。
原材料の仕入れや商品の販売は掛取引で行うことが多いため、支払いと支出のタイミングである支払いサイトには十分注意が必要です。例えば、取引先からの入金より支払いが先行した場合、手持ち資金が不足してしまう恐れがあります。手持ち資金が不足し資金ショートを引き起こすと取引先への支払いが滞り、最悪のケースでは黒字倒産に陥ってしまうかもしてません。
事業が拡大しているタイミングこそ計画的に資金調達を行い、十分な運転資金を確保することが重要です。
運営資金の獲得
資金調達が必要なのは、開業時や事業拡大時だけではありません。事業を運営していくためには、人件費や地代家賃、水道光熱費、減価償却費、宣伝広告費といった固定費や、原材料費、仕入れ費用、外注費、販管費などの変動費が毎月かかるため、一定の運転資金が必要です。
このように、事業を運営していくために通常必要な資金のことを経常運転資金といいます。必要な運転資金は業種や業態によって異なりますが、3~6ヶ月分程度が一つの目安です。運転資金が不足すると事業が滞ってしまうため、しかるべきタイミングで資金を調達する必要があります。
設備投資
事業運営を続けていく上で、運転資金と並んで必要なのが設備資金です。例えば、製造業で製造ラインを維持するには、定期的なメンテナンスや設備機械の入れ替えが必要です。設備機械などの固定資産は経年と共に劣化するため、耐用年数が過ぎた物は入れ替えなければなりません。製造ラインを始めとした設備機械を入れ替えることを設備投資といい、設備投資には設備資金が必要です。
設備投資は高額になることが多いため、一般的には政府系金融機関や銀行、信用金庫などから融資を受けて資金調達を行います。設備資金は運転資金とは別枠で扱われるため、より長期かつ高額な融資を受けることも可能です。信用力に不安のある小規模事業者の場合は、国や地方自治体が交付する補助金を利用する方法もあります。
M&A
運転資金や設備資金以外の資金使途としては、M&Aを行うケースなどが考えられます。M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略で、日本語では「企業の合併・買収」を意味するビジネス用語です。すなわち、一つの会社が別の会社を買収したり、二つ以上の会社が合併して一つの会社になったりすることを意味します。M&Aという言葉が使われだした当初は外資系企業による会社の乗っ取りのような悪いイメージもありましたが、現在ではIPO(Initial Public Offering:新規株式公開)と並んで重要な成長戦略の一つです。
M&Aを行う場合、株式取得の費用だけでなく、アドバイザリー契約の仲介手数料や着手金、デューデリジェンス(Due Diligence:適正評価手続き)の手数料などさまざまな費用がかかるため、資金調達を行う必要があります。M&Aに伴う資金調達は銀行から借り入れるのが一般的ですが、日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金を利用するのも一つの方法です。
資金調達を成功させる7つのポイント
前章で解説したとおり、事業を安定して運営し成長させていくためには、適切なタイミングで資金調達することが非常に重要です。しかし、信用力が乏しく融資を受けにくい小規模事業者にとって、資金調達は頭の痛い問題かもしれません。ここでは、資金調達を成功させるための7つのポイントをご紹介します。
資金調達を成功させる7つのポイント
信用を確立する
金融機関から融資を受ける際や投資家から出資を受ける際には、とにかく信用を確立することが重要です。企業に対し融資したり出資したりする場合、資産状況や財務状況などの定量的な判断軸だけでなく、経営者の信頼や資質など定性的な判断軸でも審査が行われます。
特に、まだ実績や信用に乏しいスタートアップベンチャーなどの場合は、経営者の信用や手腕、人間性などがそのまま融資・出資の可否に直結するケースも珍しくありません。金融機関や投資家に対し、この企業もしくはこの経営者なら投資しても大丈夫だと思わせるような信用を確立することが重要です。
具体的な事業計画書を準備する
融資や出資を受ける際に必須の事業計画書ですが、なるべく具体的に実現可能性の高い内容の事業計画書を準備しましょう。事業計画書には事業の概要や差別化戦略だけでなく、資金調達計画やリスクマネジメントについても記載しなければなりません。
事業計画書を作成する際は、ポートフォリオやビジョンを提示することも重要ですが、事業戦略に基づく中長期的なロードマップを示すことが特に重要です。ポジティブなシナリオだけでなく、リスクにも十分配慮した堅実な事業計画を提示しましょう。
資金内訳を明確にする
金融機関は、使途不明の融資や資金の流用を非常に嫌がります。そのため、融資を申し込む際にはできるだけ資金使途・資金内訳を明確化しましょう。
例えば、資金繰り表を参考に向こう半年間に必要な運転資金を算出する、ボーナス時期であれば賞与査定に基づき人件費を算出する、設備機械のメンテナンスやリプレースが必要な場合は相見積もりを取って必要な設備資金を算出する、などで資金の内訳を明確化し金融機関に提示します。
融資の審査では融資額の妥当性が重視されるため、資金使途および資金内訳を明確化し、妥当性のある融資希望額を提示することが重要です。
全体的なスケジュールを考える
融資を受ける際は資金調達までのスケジュールに注目しがちですが、調達から返済までの全体的なスケジュールを考えることが重要です。資金調達計画で資金に関するスケジュールを明確化することで、必要なタイミングで調達計画や返済計画などをスムーズに立案できます。
また、補助金や助成金など、資金調達の方法によっては申し込みできるタイミングが限られているケースもあるため、資金調達計画によってタイミングを逃さずに申請することが可能です。資金調達計画の全体スケジュールを立てる場合は、資金ごとにタイムラインで優先順位を設定するとよいでしょう。
調達までの期間を確認する
融資の手段によっては、融資実行までに一定の時間が必要です。例えば、銀行のプロパー融資の場合は申し込みから融資実行まで数週間から1ヶ月程度、日本政策金融公庫の融資の場合は1ヶ月から2ヶ月程度の時間がかかります。資金不足に陥らないよう、融資を申し込む場合は必ず融資実行までの期間を確認しましょう。なお、一般的な融資の流れは下記の通りです。
- 相談・申し込み
- 面談・審査
- 融資実行
- 返済開始
ちなみに、地方自治体・地元金融機関・信用保証協会が協力して提供する制度融資の場合は、関係機関が多く、それぞれ審査が行われるため融資実行までに2~3ヶ月程度の時間がかかります。制度融資を利用する場合は、スケジュールに余裕をもって申請しましょう。
専門家に相談する
資金調達の方法に迷った場合は、専門家に相談するのも良い方法です。例えば、金融機関の融資や投資家の出資を受ける場合は、ファイナンシャルプランナー(FP)や中小企業診断士、経営コンサルタントなどが強い味方になってくれることでしょう。また、一般的な融資を受けづらく補助金・助成金の申請を検討している小規模事業者の場合は、社会保険労務士や行政書士、公認会計士、税理士などからアドバイスを貰えます。補助金・助成金は種類が多く要件も複雑で、申請期間も限られているため専門家に一任するのも一つの方法です。
慎重に資金調達先を選ぶ
資金調達を行う場合は、資金使途や融資期間、融資希望額に応じて慎重に資金調達先を選ぶことが重要です。
例えば、銀行のプロパー融資は金利が低く融資期間も長いため、長期かつ高額な資金調達に向いています。一方、ノンバンク系のビジネスローンは金利が非常に高いため抵抗感のある方も多いかもしれませんが、審査が優しく最短即日で融資を受けられるため急な資金調達には最適です。
支出が先行し資金が不足しそうな場合は、「支払い.com」のような後払いサービスを利用するのもよいでしょう。さまざまな選択肢を考慮し、ケースバイケースで最適な資金調達先を選ぶことが重要です。
低い手数料で資金調達したいなら「支払い.com」のご検討を
今回は資金調達にかかる手数料について解説しました。融資を受ける場合は金利と共に手数料がかかり、あわせて「金利手数料」と呼ばれています。金利手数料は融資金額に対し数%ですが、長期かつ高額の融資を受ける場合はこの負担も馬鹿になりません。
金利手数料は資金調達方法によって大きく異なります。金利手数料が低い資金調達方法はその分審査が厳しいため、資金使途や融資期間、融資希望額に応じてケースバイケースで最適な方法を選択することが重要です。
より手軽に素早く資金調達を行うには「支払い.com」を利用する方法もあります。