製造業では、製造ラインの構築をはじめとした膨大なイニシャルコストが必要です。製造ラインの構築後も定期的なメンテナンスや追加投資など、継続的な設備投資が求められます。さらに、大規模な工場などを維持するための固定費や、商品を製造するための原材料費等の変動費など、多額の運転資金が必要です。
こうした理由から、製造業の資金繰りは非常に難しいといわれています。また、為替や景気の影響を受けやすく、単価の安い海外企業に受注を奪われやすい点・回収サイトが長いことも理由の一因です。
それでは、製造業の資金繰りを改善するにはどうすればよいのでしょうか。当記事では、製造業の資金繰りが難しい原因と、改善する方法や資金調達法について詳しく解説します。
製造業の資金繰りが難しい主な原因
製造業は資金繰りが難しい分野の代表例とされています。では、具体的にどのような背景があるのでしょうか。
資金繰りを悪化しやすい特徴と理由について、具体的に確認していきましょう。
製造業の資金繰りが難しい主な原因
膨大なイニシャルコストがかかる
仕事を受注してから製造を開始するまでの初期費用、いわゆるイニシャルコストが肥大しがちなのが製造業です。
主に以下の費用がイニシャルコストとして必要となります。
- 設備投資費
- 原材料費
- 人件費
- 外注費
- 光熱費
これらの費用は基本的に売上金が入る前に支払いをするため、イニシャルコストが膨らんでしまうのです。受注・生産・販売のサイクルを安定的に回すには、3ヵ月〜6ヵ月分のコストを運転資金としてプールしておくことが理想的です。
継続的に設備投資する必要がある
製造に用いられる工業機械などの設備は日進月歩で進化し、また経年劣化するものです。円滑に事業が回り収益が出せている状態であっても、より多くの利益を得るチャンスを逃さないためには、継続的な設備投資が欠かせません。資金が潤沢な大企業であれば自己資本が多いため、設備投資に素早く対応できるかもしれませんが、中小のような資金力が乏しい企業にとっては簡単なことではないでしょう。
受注が増えると運転資金の確保が難しい
大口案件などで受注が増加すると原材料費や人件費をはじめとした、いわゆる変動費の追加が必要になります。この受注増加や事業拡大の際に追加でかかる費用が増加運転資金です。製造業では売り上げの発生から入金までにタイムラグがあるため、受注が増えると比例して入金までを繋ぐ運転資金が高くなります。また、大口案件の受注などで資金が大量に流れ出し、資金繰りが難しくなるケースもあり、結果的に倒産してしまうこともあり得るのです。このように、製造業では潤沢な運転資金が必要になります。
原価管理が難しい
原価管理の難しさも製造業が抱える大きな課題のひとつです。
ここでいう難しさとは、適正な在庫管理の難しさと原価率の計算そのものが難しいという2つの意味があります。
まず、原価管理が製品ごとにできていないと、過剰発注などをしてしまい常に過剰在庫を抱えてしまうでしょう。
またコスト削減の必要性は製造業に限った話ではありませんが、原価と販売管理費の区分の理解不足のため原価率を正しく算出できずにコスト削減ができていない企業も見受けられます。
このように原価管理ができていないことで資金繰りが厳しくなってしまうのです。
単価が安い海外企業に受注を奪われる
海外企業との競争が激化していることも、製造業として無視できません。経済成長の只中にある中東や東南アジア企業の技術進歩は凄まじく、さらに国内より安価で大量生産できることもあり、実際に海外企業にシェアを奪われ始めています。
さらに、受注が奪われながらも人件費をはじめとした固定費は毎月発生するため、資金繰り悪化の要因となります。しかし、人員の削減をはかると大口案件の受注が難しくなり、繁忙期のみ臨時増員を続けていると、製造技術力が向上しません。
景気や為替の変動に影響されやすい
国際的な景気に影響を受けやすいのも製造業が抱える課題です。
景気の悪化は、日本のような品質の高いモノ作りが売りである国の受注減少を招いてしまいます。近年ではリーマンショックやコロナ禍での受注停滞が良い例です。受注が減少、またはストップしてしまっても、従業員の人件費をはじめとした固定費は発生し続けます。
しかし、人員削減からの繁忙期のみの増員では、日本のお家芸である高品質のモノ作りができないのは前述のとおりです。そのため、景気低迷による受注減少にも耐えられる財政基盤作りが求められるのです。
受注から入金までの回収サイトが長い
回収サイトとは、売掛金として計上してから実際に入金されるまでの期間のことです。製造業ではこの期間の長さが課題となっています。
受注後はイニシャルコストと人件費、時間などをかけて製造し、そこから短くても2,3ヵ月後の入金が一般的です。場合によっては数ヵ月もの間、入金がないこともあり得ます。取引先との交渉次第では回収サイトを短くしてもらえるかもしれませんが、絶対とはいえません。潤沢とはいわずとも数か月分の運転資金がないと経営が厳しいものになってしまうでしょう。
不良在庫や不良債権などのリスクもある
見通しの甘い販売計画により不良在庫を抱えてしまった場合や、取引先の業績悪化などが原因で売上債権の回収が遅れたりした場合も資金繰りは悪化します。
不良在庫を抱えることになる原因として挙げられるのは、販路拡大計画や単価引き上げが失敗した場合です。
売上債権の回収に関しては、事前にサイトを伸ばしてほしい旨の相談があればまだ良いですが、不良債権化してしまうと資金繰りの悪化は避けられないでしょう。
製造業における受注から入金までの流れ
製造業において、仕事を受注し、製品を製造・販売して代金を回収するまでの一連の流れは基本的に以下のようになります。
- 仕事の受注
- 原材料の仕入と買掛金の発生
- 仕入代金である買掛金の支払い
- 外注先へ業務を発注
- 外注先へ外注費の支払い
- 製品を製造するにあたり光熱費や労務費といった諸経費の発生
- 諸経費の支払い
- 製品の完成
- 製品の販売と売掛金の発生
- 売掛金の請求
- 売掛金が入金期日に入金される
受注した仕事により多少の差異はあるものの、入金までのシークエンスの序盤に諸々の支払いが続くのが製造業の弱点です。
売掛金の入金を待たずに手元の資金が尽きてしまうと、仕入れなどが行えないため次の仕事を受注ができません。資金面における準備に万全を期していなければ健全な経営はできないのです。
製造業における「資金繰り」について
資金繰りの難しさについてはここまで解説したとおりです。では、そもそもの「資金繰り」とはどういったものなのでしょうか。ここでは資金繰りの基本について解説します。
製造業における「資金繰り」について
資金繰りはお金の流れを管理すること
そもそも「資金繰り」とは資金を管理する流れのことです。
売上金額や商品の仕入れ、経費の支払いなど、事業を運営していく中でさまざまなお金の移動が発生します。こうした資金の出入りを精緻に把握し、無理が生じないよう調整することを指す言葉です。
ここでいう資金とは、現金預金や有価証券などすぐに支払いとして利用できるものに限られます。したがって、解約に時間がかかる定期預金や貸付金、売掛金などは資産であり資金としてカテゴライズされません。もちろん自社ビルなどの不動産や設備などもすぐに現金化できないため、資産の扱いになります。
資金繰りが滞ると従業員への給与や取引先への各種支払いが止まってしまうことになり、ケースによっては黒字状態でも倒産してしまう可能性もあり得ます。
運転資金の確保には資金繰りが必須
製造業に限った話ではなく、あらゆる業種で操業するための運転資金は欠かせません。
原材料の仕入れ・製造・販売が製造業における基本的な流れですが、この場合は仕入れなどの支払いが先に発生し、販売を経てようやく入金がされます。この支払いから入金までの間に上手く資金繰りができないと、操業するための運転資金が底をついてしまいます。
そのため、運転資金の確保には資金繰りが必須といえるのです。
運転資金には「固定費」と「変動費」がある
運転資金には固定費と変動費に大別でき、それぞれ内容に違いがあります。
変動費
売り上げの増加に比例して増え、落ちれば減るのが変動費です。
売り上げの増加は事業の成長に繋がり、より多くの製造が必要になるため、仕入れ額や人件費が膨れ上がります。
具体的には以下の項目が変動費にカテゴライズされます。
- 製品の材料費
- 製品の仕入費
- 作業を外注した際の外注費
- 人員増強した際の人件費
- 消耗品費
- 製品を運搬するための運賃
固定費
売り上げの増加・減少に関わらず、常に一定額発生するのが固定費です。
以下の項目が固定費にカテゴライズされます。
- 従業員の給与
- 事業所などの家賃
- 広告宣伝費
- 火災保険をはじめとした保険料
- 減価償却費
ただし、給与は残業代が加算されると変動し、広告費は出す量によっても変わります。
これは、金額が固定しているという考え方ではなく、売り上げの増減に左右されない額であるため、固定費に入るのです。
製造業は比較的運転資金が必要な業態
製造業は比較的資金繰りが難しい業種と言われています。全ての事業者が常に一定の受注があるとは限らず、原価管理の難しさや海外にシェアを奪われつつある現状、国際的な景気の波に左右されやすいということは前項で解説したとおりです。中でも、特に運転資金が必要とされる理由には、やはり受注から入金までの回収サイトの長さが挙げられるでしょう。受注してから販売し入金されるまでのタイムラグが長いため、黒字経営をしているにもかかわらず大口の受注を受けた場合に製造途中で運転資金が尽き、倒産してしまう可能性もあるのです。
製造業は設備資金も確保する必要がある
製造業では運転資金とは別に設備資金も確保しなければなりません。
設備資金とは、長期にわたる経済的効果が期待できる設備や機器、資産価値のあるものなどを取得するための資金です。例として以下のようなものが挙げられます。
- 事業所や工場などの増設、拡張
- 新しい製造機器の導入
- 社用車の購入
- 不動産の購入
- PCやOA機器の導入やシステム開発
運転資金は資金繰りに必要な資金ですが、設備資金は決算上は資産とされるもので、異なる性質の資金として明確な区別がされるため注意が必要です。
製造業の資金繰りにかかわる4つの運転資金
基本的に運転資金とは、支払いから入金までのタイムラグがあるなかで操業するのに必要な資金です。
しかし、厳密にはさまざまな要因の運転資金があります。この項目では運転資金の種類と違いについて解説します。
製造業の資金繰りにかかわる4つの運転資金
経常運転資金
一般的に運転資金とも呼ばれ、製造業の場合は、原材料の仕入れ費用や人件費、光熱費、家賃などが経常運転資金にあたり、入金されるまでのタイムラグを埋めるために活用されます。
経常運転資金は事業を続けていくにあたり欠かせない費用をまとめたもので、不足してしまうと給料が支払えなかったり、仕入れができなくなったりと、業務の継続ができません。
一般的には備えておくべき経常運転資金の目安は、粗利益の3ヵ月〜6ヵ月程度とされています。
増加運転資金
受注が増え、売り上げが増加している状況、つまり企業が成長しているときに必要になる運転資金は、別途に増加運転資金と呼びます。
受注が増加すると、新しい設備や人員の追加が必要になるでしょう。そういった状況では、通常の運転資金だけでは足りずに、設備投資の資金や増員分の人件費などが欠かせません。これが増加運転資金です。
企業が成長しているにもかかわらず増加運転資金が不足してしまうと、黒字倒産という可能性も出てきますので注意が必要です。
減少運転資金
前項で解説した増加運転資金とは対照的に、事業不振などで売り上げが低下してしまうと、減少運転資金が必要となります。売り上げの減少にかかわらず人件費や家賃といった固定費は変わらず発生しますし、順調に回っていたときの仕入れ代金(買掛金)なども支払わなければなりません。それに充てるのが減少運転資金です。
こういったケースでは、減少運転資金を取りあえずしのぎとして操業しながら売り上げを増やせればベストですが、場合によっては人件費などを削減して経営状態を回復させなければなりません。
季節運転資金
特定の季節や時期に発生する支出への備えが季節運転資金です。
主に以下のようなタイミングで発生し、通常に比べて運転資金が膨らみます。
- 人件費が多くかかる夏・冬などのボーナス月
- 季節により需要が下がる製品を扱っている場合の売り上げが下がる時期
- 祭事用品などを扱っている場合は、大量仕入れが必要になる正月やクリスマスなどのイベント近辺の時期
こういったケースで膨れ上がる運転資金を季節運転資金と呼びます。毎年発生するものなので、十分な運転資金を確保しておかなければなりません。
製造業の資金繰りを改善する方法
固定費・変動費ともに高くなりがちで、定期的な設備投資も必要な製造業において、資金繰りを改善するにはどうすればよいのでしょうか。資金繰りが悪化すると、売り上げは立っているのに運転資金が枯渇し倒産してしまう、いわゆる黒字倒産に陥りかねません。ここからは、製造業の資金繰りを改善する方法をご紹介します。
製造業の資金繰りを改善する方法
資金繰り表を作成しお金の流れを把握する
まずは、決算報告書に含まれる「キャッシュフロー計算書」を精査し、過去から現在までのお金の流れを確認しましょう。商品引き渡しから入金までの期間、いわゆる「回収サイト」の長い取り引きがある場合は、サイトを短縮するよう取引先と交渉してください。また、自社から取引先に代金を支払う「支払いサイト」については、できるだけ長くするのが鉄則です。
現在から先の未来に関するお金の流れについては、「資金繰り表」を作成することで把握できます。資金繰り表は、一定期間の収入と支出の状況をまとめた管理表です。回収サイトと支払いサイトが一目瞭然で把握できるため、資金繰り把握・改善に大きく役立ちます。代金の回収より支払いが先行し運転資金が枯渇しそうな場合は、早めに資金調達を行うなどの対策を打ちましょう。
固定費を削減する
毎月一定でかかる「固定費」を削減することも重要です。製造業における固定費には、従業員の給与・事業所などの家賃・広告宣伝費などが含まれます。
人件費については、非正規労働者を活用したり、製造ラインをオートメーション化したりすることで削減可能です。事業所や工場の家賃を削減するには、賃料の安い地域へ移転する方法や、自社で工場を持たないファブレス化するなどの方法が考えられます。
広告宣伝費は最も削減しやすい費用で、大手媒体への出稿を減らし、インターネットやSNSを活用したマーケティング手法に切り替えるのも一つの方法です。
固定費の削減は、利益率のアップに直結します。固定費を削減することで資金繰りに余裕が生まれ、運転資金の安定確保につながるでしょう。
原価率を下げる
売上高に占める原価の割合である原価率は、利益率に直結する重要な指標です。製造業における原価率は平均80%前後となっており、比較的高い産業といえます。なかでも原材料費が高額になる傾向にあるため、原材料の管理には注意が必要です。
原材料費を削減するには、品質に影響を与えない範囲内で原材料の見直しや、仕入れ先の見直しなどを検討してみましょう。例えば、既存の原材料を別の安価な原材料で代替できないか、といった研究開発が該当します。これは、原価率を下げるための大切な取り組みですが、物価高騰や枯渇・不作などで、既存の原材料が手に入らなくなった場合のリスク管理という意味でも、非常に重要な取り組みです。
また、必要に応じて仕入先を見直す必要もあるでしょう。為替や物価の変動に合わせ既存の契約を適宜見直すのはもちろん、より条件の良い新規の仕入先を開拓するのも有効な方法です。原価率を下げることで利益率が上昇し、資金繰りにも余裕が生まれます。
生産性を上げる
生産性を上げる施策もまた、利益率と資金繰りを改善するための重要な取り組みです。製造業においては、IoTなどを活用し製造ラインをDX化する取り組みが注目を集めています。
例えば、従来人が行っていた作業をオートメーション化することで、生産性は大幅に上がるでしょう。機械であれば、人では到底真似できないようなスピードで、正確に反復作業を行えます。また、カメラデバイスなどを活用し監視システムを構築すれば、品質チェックの手間も同時に削減可能です。
生産性を上げることで利益率も上昇するため、資金繰りの改善も期待できます。また、製造ラインをDX化することで、一定の品質を確保したまま人件費を抑えることができる点も大きなメリットです。
原材料や在庫の管理を徹底する
資金繰りを改善するには、原材料や在庫の管理を徹底することも重要です。例えば、原材料を発注するには、それだけ資金が必要です。保管するにも、保管場所の確保や一定の管理コストなどがかかります。保管期間が長くなれば劣化が進み、ロスが発生する恐れもあるでしょう。このようなコストを抑えるためにも、管理を徹底し、原材料の発注は必要最低限にする必要があります。
在庫についても同様です。売れない在庫を抱えてしまうと、保管や棚卸しに一定のコストがかかります。当然ですが保管している間に劣化は進み、商機を逃した商品は消費者のニーズも低下してしまうでしょう。このように、不良在庫となった商品はマイナスにしかならないため、早めに廃棄するか在庫買取業者などに引き取ってもらうのが得策です。
設備投資は慎重に検討する
製造業では、一度製造ラインを構築すればそれで終わりではありません。当然機械設備は経年劣化するため、定期的なメンテナンスや交換が必要です。また、製造品目の変更や追加などにも、適宜対応する必要があります。生産性を上げるためには、製造ラインをDX化し効率化を図る必要もあるでしょう。
このように、製造業においては、継続的な設備投資が求められるのが一般的です。事業を継続するだけでなく、事業拡大を目指す上でも、一定の設備投資は非常に重要です。
しかし、闇雲に設備投資すればよいというわけではありません。設備投資には、膨大な設備資金が必要です。大企業であれば、多額の設備資金を確保できるかもしれませんが、中小企業では経営を圧迫してしまう恐れがあります。設備投資を行う場合は、費用対効果を慎重に検討し、資金繰りに影響を与えない範囲で行うのが重要です。
早めに資金調達する
資金繰り表などで運転資金の不足が予測される場合は、早めに資金調達することも重要です。売掛金の回収より買掛金の支払いが先行し運転資金が不足すると、資金ショートを引き起こし黒字倒産に陥ってしまう恐れがあります。
資金調達の方法は、日本政策金融公庫の融資や金融機関のプロパー融資などが一般的ですが、審査が厳しく資金を得るには一定の期間が必要です。ノンバンク系のビジネスローンは比較的審査が優しく、短期間で資金を確保できますが、金利が高いというデメリットがあります。
その他の方法としては、売掛債権を買い取ってもらうファクタリングや、請求書の支払いをクレジットカードで先延ばしにできる後払いサービスなども有力な資金調達方法です。特に、「支払い.com」などは事前の申し込み不要で即日利用開始できるため、資金ショートの恐れがある場合は積極的に利用を検討するとよいでしょう。
製造業の主な資金調達法
資金調達となると、まず銀行からの融資を検討する人も多いのではないでしょうか。しかし、資金調達法にはさまざまな種類が存在します。「どのくらいの期間借り入れるのか」「いくら必要なのか」など自社の状況に応じて資金調達法を検討することが重要です。ここでは、製造業に適した資金調達法を8つご紹介します。
製造業の主な資金調達法
政府系金融機関の融資
民間金融機関の取組みを補完し、事業に取組む人への支援を目的とした政府系金融機関である「日本政策金融公庫」は最初に検討したい融資元です。公庫では、個人事業主や中小規模の事業主への融資や、信用保険業務を行っています。
公庫から借り入れるメリットは以下のとおりです。
- 創業時の融資に前向き
- 融資での自己資金要件が低い
- 融資までの期間が短い
- 返済期間が長く設定されている
製造業で資金調達を行うなら、以下の制度の利用を推奨します。
新創業融資制度
新規で事業を始める人や、事業開始後税務申告を2期終えていない人が最大3,000万円(うち運転資金1,500万円)まで低金利で借入できる制度です。自己資金の要件は、創業時において創業資金総額の10分の1以上となっています。原則として、無担保無保証人の融資制度のため、代表者個人に責任が及ぶことはありません。対象者や自己資金の要件の詳細は日本政策金融金庫の新創業融資制度のページにてご確認ください。
経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)
社会的、経済的環境の変化などによって、一時的に売上の減少など業績悪化となっているものの、中長期的に業績の回復が見込まれる中小企業に対して融資を行う制度です。直接貸付による融資限度額は7億2千万となっています。この制度を利用するための要件の詳細は日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)のページにてご確認ください。
民間金融機関のプロパー融資
銀行や信用組合、信用金庫などの民間金融機関のプロパー融資を活用することも資金調達法のひとつです。
プロパー融資とは、企業から金融機関から直接受ける融資のことで、信用保証協会による保証がない融資です。
プロパー融資のメリットは以下のとおりです。
- 金利が低い
- 融資限度額がない
- 企業の信用度が上がる
- 保証料が必要ない
- 審査日数が短い
金融機関は貸し倒れのリスクを低減するために、業績が安定している企業を対象としていることが一般的です。創業したばかりの企業や、零細・中小企業への融資は難しいかもしれません。しかし、実績と信頼を重ねている場合はプロパー融資を受けられる可能性は十分あります。金融機関が貸し倒れリスクを負うプロパー融資は審査が厳しい傾向ですが、融資を受けられれば取引先や他の金融機関から信用度の高い優良企業と認識してもらえるでしょう。
豊富な実績がある企業や信頼度に自信のある企業であれば、プロパー融資での資金調達が適しています。
動産・債権担保融資(ABL)
売掛債権担保付き融資・動産担保付き融資、通称ABL(Asset Based Lending)とは、商品在庫や売掛金など流動性の高い事業資産を担保に融資してもらう方法です。会社に一定の在庫や売掛債権を常に抱えている場合は、その流動資産の評価額の50%を限度として短期間の借り入れまたは当座貸越枠の作成ができます。
一般的に、当座貸越枠の審査は厳しい傾向ですが、ABLであれば流動資産を担保とするため、業績を問わずに資金調達できる可能性があります。短期資金や当座貸越枠の作成を希望する場合に適した資金調達法と言えるでしょう。
ノンバンク系のビジネスローン
そもそもノンバンクとは、銀行以外の金融機関を指します。お金を貸す与信業務に特化していて、銀行のようにお金を預かる業務には対応していない点が特徴です。代表的なものとして、信販会社や消費者金融が挙げられます。
製造業で資金調達を行う際は、ノンバンクが提供する事業資金専用の融資であるビジネスローンも活用できます。
ただし、ビジネスローンは、非対面での契約や即日融資に対応しているものの、金利が非常に高いため注意が必要です。金利のことを考慮して、他の資金調達法が難しいときの手段としましょう。
もうひとつの注意点は、数千万円以上の金額が必要な場合には適していない点です。ノンバンク系のビジネスローンの借入限度金額は数百万円とされていることが多いため、十分な資金を調達できない可能性があります。
やむを得ない場合かつ短期的に少額借り入れたい場合のみ活用することを推奨します。
ファクタリング
企業が行う資金調達法の一つにファクタリングがあります。ファクタリングは売掛債権を利用して現金化を行うサービスです。
一般的に、ファクタリングサービスは自社が保有する支払期日前の売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料を引いた現金額を得る仕組みになっています。支払い期日より前に資金を得られるため、資金繰りの改善に役立てることが可能です。
また、ファクタリングは金融機関からの借入・融資などとは異なるため、負債が増えない特徴があります。一方で、そのビジネスモデルゆえ他の資金調達法と比較すると比較的割高な手数料となっています。
またファクタリングの中にも種類があり、「買取型」「保証型」の2種類に分けられます。さらに買取型は「2社間ファクタリング」「3社間ファクタリング」と細分化されています。
- 買取型
- 2社間ファクタリング:利用者とファクタリング会社の間で契約する方法。売掛先に許可を得る必要がなく、スピーディな資金調達が可能。一方、手数料は比較的高水準。
- 3社間ファクタリング:売掛先も交えた契約方法で手数料が安く抑えられる傾向にある。一方で、売掛先に資金繰りが良くない印象を与えてしまうなど信用面でのリスクがある。
- 保証型
保証型は、その名のとおり保証会社が保証金を支払ってくれる仕組みです。売掛先が何らかの理由で倒産するなど、売掛金の回収ができなくなった場合に役立ちます。万が一のリスクを防ぎたい場合は保証型を利用しましょう。
このように、一口にファクタリングといっても種類はさまざまです。また、サービス提供元の会社によって手数料・買取り条件は異なるため、比較検討して自社に合うものを選びましょう。
請求書のカード払いで支払いを先延ばしにする
資金調達とはやや毛色が異なりますが、資金繰り改善のための資金調達を検討されている方にとって、支払い方法の見直しも大切です。特に請求書のカード払いは支払い側にメリットが多く、具体的には以下のような利点があります。
- 融資をはじめ、その他の方法と比較すると審査・手続きがスピーディー
- 手数料がかさまず、リーズナブルな金額におさめやすい
- 支払い経路が一元化しやすく、管理が煩雑にならない
- ポイント特典などが付いてるカードであればお得に利用できる
現在は請求書のカード払いをするうえで様々なサービスがリリースされていますが、中でもおすすめなのがUPSIDERとクレディセゾンが共同提供する新サービス「支払い.com」です。本サービスでは企業間におけるあらゆる銀行振込の支払いを、手持ちのクレジットカードで決済することができます。支払い期日をクレジットカードの引落日まで延長することで、ユーザーは最大60日の資金繰り改善が可能に。手数料も一律4%と低く、利用しやすいサービスとなっています。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者などを対象にした補助金支援制度です。
昨今急速に変化が進むビジネス環境の影響(働き方改革・被用者保険の適用拡大・労働者の賃上げ・インボイスの導入など)を考慮し、これらの制度変更に対応できる環境を整えるために生まれました。また、各事業者が取り組んでいる革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を促進する背景もあります。
令和5年度の本制度では、以下の要件を満たす事業計画を策定・実施している中小企業であれば、どの事業者でも応募可能となっています。条件は以下のとおりです。
- 付加価値額+3%以上/年
- 給与支給総額+1.5%/年
- 事業場内最低賃金 地域別最低賃金+30円
※なお、中小企業の定義は業種によって異なります。製造業の場合は資本金3億円以下、または従業員300名以下の企業を指します。
また、審査時には革新性や事業性などを考慮のうえ判断されるため念頭にいれておきましょう。なお、補助金の上限額は750万円〜5,000万円、補助率は1/2〜2/3となっています。
補助金や助成金という特性上、目的や条件があらかじめ定められており、自社の事業が合致するか否かはケースバイケースです。加えて、資金調達したいタイミングで利用できるかどうかは分からないため、民間サービスなどと比較するとどうしても柔軟性に欠ける特徴があります。公募・申請期間なども決まっているため、検討している方は綱領をよく確認したうえで活用しましょう。
>>公募要領について|ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト
事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、コロナの影響で厳しい状況にある中小企業・中堅企業・個人事業主・企業組合などを対象とした補助金制度です。ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応できるよう、中小企業のダイナミックな事業再構築を支援し、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。
主要な申請要件は大きく3つの項目に分かれており、それぞれ下記のとおりです。
- 売上が減っている
- 事業再構築に取り組む
- 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
詳細な要件に関しては公式HPを確認してください。
製造業の資金繰り改善には「支払い.com」がおすすめ
今回は製造業にフォーカスして、資金繰りのトピックを解説してきました。製造業の資金繰りは難しいといわれています。なぜなら、製造業は膨大なイニシャルコストがかかり、製造ラインの構築後も継続的に設備投資が必要となるからです。また、製造業は固定費・変動費などの運転資金が高く、為替や景気の影響を受けやすい産業でもあります。
さらに、納品から入金までの回収サイトが長いのも問題です。代金の回収を待つ間に支払いが先行すると、資金ショートを引き起こして黒字倒産に陥るリスクもあります。資金ショートを回避するには、早めの資金調達が重要です。例えば、後払いサービス「支払い.com」を利用すれば簡単に資金繰りを改善できるため、運転資金が不足しそうな場合は積極的なご利用をおすすめします。