近年、期日現金に切り替える企業が増加傾向にあり、近いうちに取引先から期日現金を持ちかけられるかもしれません。もうすでに期日現金を持ちかけられている事業主の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
期日現金は、代金を受け取る側の資金繰りの悪化につながる可能性もあるため、安易に受け入れず慎重に検討する必要があります。そこでこの記事では、期日現金の概要やメリット・デメリット、期日現金を受け入れるべきか判断する際のポイント、ファクタリングの基礎知識、おすすめの後払いサービスについて解説します。
期日現金とは?
まず始めに、期日現金について解説します。
期日現金とは?
売掛金の決済方法の一種
期日現金とは、売掛金の決済方法の一種で、通常の支払期日を先延ばしにした取引です。「期日払い」や「延現金」とも呼ばれ、先延ばしにした支払期日に現金を銀行振込みで支払う決済方法です。
通常の請求書による支払いでは、売掛金の支払期日は締日の翌月または翌々月払いに設定されていることが一般的です。一方、期日現金では、締日から90日や120日など支払いサイトが長く設定されています。
最近では、大手を中心に売掛金の決済方法を期日現金に切り替える企業が増加傾向にあり、主流の売掛金回収方法になりつつあります。
振り込みとの違い
金融機関の口座に現金を振り込む「振り込み」は、送金方法としては期日現金と共通していますが、支払いまでの期限が大きく異なります。期日現金は支払いサイトを通常よりも長く設定している場合のみを指すためです。
手形決済との違い
そもそも手形とは、将来の特定の日に特定の金額を支払うことを約束する有価証券のことです。
手形決済とは、代金を後の支払期日に支払うことを約束する手形を渡して決済する方法を指します。
手形決済の最大のメリットは、支払期日の延長ができる点です。支払サイトが長い点は期日現金と共通していますが、期日現金では手形を使用しません。手形決済は金銭価値のある「約束手形」という有価証券を発行するため、手形割引や裏書手形などの方法で支払期日より前に換金が可能です。
期日現金と手形決済の違いは「有価証券の有無」と言えます。期日現金は単に振込みされるのみですが、手形決済は約束手形が事前に発行されるため支払期日前に換金できるという点が両者の違いです。
なお、2026年には約束手形が利用廃止されます。約束手形による支払いは、現金が手元に入るまで時間がかかり、支払期限前に現金化する際の割引料が高いことから、取引上の立場の弱い受注側企業の資金繰りの悪化につながるためです。
電子記録債権との違い
電子記録債権とは、紙の約束手形と同等の機能を持つ支払手段です。全国銀行協会が設立した「でんさいネット」を活用して、オンラインで金銭債権を管理します。手形や売掛債権の課題を克服した金銭債権となっています。
期日現金との違いは、金銭債権を発行する点です。
電子記録債権の特長は以下が挙げられます。
- 電子データ送受信による発生・譲渡
- 電子債権記録機関の記録原簿での管理
- 分割可能
- 電子記録により債権の存在・帰属を可視化
- 通知が不要
- 原則として、人的抗弁の切断
期日現金のメリット
ここでは、支払側・受取側それぞれが得られる期日現金のメリットをご紹介します。
期日現金のメリット
支払側のメリット
まずは、支払側のメリットから見ていきましょう。
① 手形取引のコストを削減できる
手形取引には印紙税や発行手数料などの諸費用がかかります。手形の発行に伴い、約束手形への記名や印紙貼り付け、郵送などの事務作業も行わなければなりません。期日現金であれば手形を使用しないため、手形取引に伴うコストや手間を削減できるのです。
② 支払いサイトが長く資金繰りに余裕が生まれる
売掛金の支払期日は締日の翌月または翌々月払いに設定されていることがほとんどです。一方、期日現金は締日から90日や120日など支払いサイトが長く設定されているため資金繰りに余裕が生まれます。
受取側のメリット
受取側にとってのメリットは受取手形の管理が必要ないことです。手形取引の場合は、自社の取引金融機関に受取手形の現金化を依頼する必要があるため、支払期日の前に取立や取立に伴う専用用紙の依頼をし、1枚につき数百円の手形取立手数料を支払わなければなりません。この取立依頼に伴う手間や手数料を省ける点がメリットと言えるでしょう。
期日現金のデメリット
期日現金はいくつかのメリットがあるのに対し、デメリットもあります。ここでは、支払側・受取側それぞれのデメリットについて解説します。
期日現金のデメリット
支払側のデメリット
支払側のデメリットは次の2点です。
① 小規模な場合はコスト削減効果が少ない
企業の規模が大きく、毎月手形取引のための手数料や印紙税が多額に発生している場合は、期日現金に切り替えることで大幅なコスト削減が可能です。しかし、小規模企業であったり、手形の取引数が少なかったりする場合は、そもそも手数料や印紙税が少額なため、コスト削減効果をあまり感じられないでしょう。
② 下請法の制限を受けることがある
下請法とは、発注者である親事業者とその下請事業者との間の取引を公正なものとし、下請事業者の利益を保護する法律です。期日現金は支払いサイトが長くなることから、現金の回収が遅くなるため受取側が不利になる可能性があります。下請法では、下請事業者が不利益を被らないために「親会社は発注した物品等の受領日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定めること」を義務づけています。
下請法の適用対象の取引となれば、90日や120日など支払いサイトが長い期日現金は適用できません。下請事業者に期日現金を持ちかける前に、下請法が適用される取引かどうかを確認しておきましょう。親事業者と下請事業者との双方が期日現金に前向きであっても、下請法の制限を受ける可能性もあります。下請法が適用される取引については下請代金支払遅延等防止法ガイドブックをご確認ください。
受取側のデメリット
次に、受取側のデメリットを見ていきましょう。支払側と比較して、受取側の方のデメリットが大きくなる傾向にあります。
① 金融機関に譲渡して割引できない
期日現金は手形決済やでんさいのように金融機関への譲渡による割引ができません。手形決済やでんさいであれば、売掛回収時期を期日以前に調整できますが、期日現金は期日調整ができないのです。期日調整できないことから、資金繰りによってはファクタリングを検討する必要もあるでしょう。
② 回収サイトが長く資金繰りが苦しくなる
期日現金は回収サイトが長く、手形決済やでんさいのように前倒しで資金を調達することもできません。そのため、入金を待っている間に手元の資金が枯渇して資金繰りが苦しくなるリスクが高くなります。受取側は、期日現金を持ちかけられたら、下請法の適用対象かどうかを確認し、適用対象であれば支払いサイトをできるだけ短くするように交渉しましょう。
期日現金を受け入れる際の判断ポイント
期日現金は受取側にはあまりメリットがなく、デメリットの方が大きくなるリスクがあることをお伝えしました。とはいえ、取引先の企業から期日現金を持ちかけられる可能性もあるでしょう。ここでは、期日現金を受け入れるべきか判断する際のポイントを解説します。
期日現金を受け入れる際の判断ポイント
運転資金に余裕があるか確認する
まずは自社の運転資金に余裕があるかを確認してください。回収サイトが長くなった場合に経営が回る程度の資金が手元に残らないのであれば、期日現金は受け入れない方が良いでしょう。売掛金を回収できない間も、税金や仕入代金、経費などは支払い続けなければなりません。
帳簿上は利益が出ていても支払いに必要な資金が手元になく、倒産してしまうことを黒字倒産と言います。期日現金はこの黒字倒産のリスクと隣り合わせの支払方法であることを十分に理解し、自社の運転資金と照らし合わせたうえで慎重に検討してください。
受注のメリットと期日現金のデメリットを判断する
前述した受注のメリットと期日現金のデメリットを天秤にかけて判断することもポイントの1つです。例えば、毎月手形取引のための手数料や印紙税が多額に発生している場合は、コスト削減になるため期日現金に切り替えることを視野に入れても良いでしょう。
ただし、期日調整ができず、回収サイトが長くなる点は大きなデメリットです。しかし、手元の資金に常に余裕がある場合は問題ありません。毎月手形取引に伴う諸経費が多額で、手元の資金に余裕がある、という場合は期日現金に切り替えた際にメリットが大きくなると考えられます。
回収サイトの短縮を交渉する
資金面で期日現金に切り替えることに不安を感じる場合は、回収サイトの短縮を交渉してみましょう。売掛金をできるだけ早く回収することで、資金繰りの悪化を防げます。
期日現金を持ちかけられた時点で交渉することが重要です。期日現金は受取側にはメリットがないことがほとんどであるため、負担が一方的に増えないように、しっかりと話し合いましょう。回収サイトの短縮を受け入れてもらえない場合は、期日現金による支払いを断ることを推奨します。
下請法に抵触する場合は断る
発注元の会社と自社の資本金および取引内容を確認し、下請法に抵触する場合は期日現金の受け入れは断ってください。法を根拠に、発注した物品等の受領日から60日以内のできるだけ短い期間に支払期日を定めるよう伝えましょう。
期日現金を期日前に現金化するならファクタリングがおすすめ
先ほど、期日現金では手形のように支払期日前に金融機関への譲渡による割引、つまり現金化ができないことをお伝えしました。しかし、ファクタリングであれば、期日現金でも期日前の現金化が可能です。ここでは、ファクタリングの概要とメリットについて解説します。
期日現金を期日前に現金化するならファクタリングがおすすめ
ファクタリングとは?
ファクタリングは、事業者が保有している売掛債権を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービスで、資金調達方法のひとつです。法的には、債権の売買(債権譲渡)契約として扱われます。売掛債権をファクタリング会社に売却することで、手数料を引いた現金を得られるため資金繰りの改善が可能です。
ファクタリングは売掛債権を買い取って現金化する「買取型」が一般的ですが、売掛債権の貸し倒れリスクを回避できる「保証型」もあります。保証型ファクタリングは、取引先の倒産などで売掛金が回収できなくなった場合に保証会社が補償金を支払ってくれるというものです。取引先の経営状態に不安がある場合は、保証型も検討しておくと良いでしょう。
ファクタリングには「2社間」と「3社間」の2種類の取引形態が存在します。
- 2社間ファクタリング
ファクタリング利用企業とファクタリング会社の2社間で契約を結ぶファクタリングです。取引先に債権を譲渡する旨を通知したり、承諾を得たりする必要はありません。取引先が関与しない2社間の取引のため素早く現金化できます。ただし、ファクタリング会社に支払う手数料が比較的高い点や、自口座への入金後にファクタリング会社への送金が必要な点には留意しなければなりません。また、万が一、売掛金を回収できない場合も契約によっては返済義務を負う可能性があります。
- 3社間ファクタリング
ファクタリング利用企業・ファクタリング会社・取引先の3社で契約を結ぶファクタリングです。利用企業がファクタリング会社に債権買取の申し込みをしたあと、ファクタリング利用の旨を取引先に通知し、承諾を得なければなりません。承諾を得られたらファクタリング会社に売掛金を売却し、ファクタリング会社から手数料を差し引いた金額が入金されます。
ファクタリング会社への入金は取引先が行うため、利用企業は入金する必要がありません。取引先からファクタリング会社に直接売掛金が支払われるため、2社間と比較して手数料が低めに設定されています。とはいえ、3社間で合意形成するために手間や時間がかかる点や、取引先に資金繰りが苦しいといった印象を与える可能性がある点はデメリットとなるでしょう。
ファクタリングのメリット
ファクタリングを利用するメリットは主に4つあります。
① 利用者の信用は審査されない
売掛金が回収できるかどうかを重視するファクタリングは、利用企業ではなく取引先の信用を審査します。利用企業の信用は審査されないため、金融機関からの審査に落ちてしまった場合でも安心して利用できるでしょう。自社の業績が悪くても利用しやすい点もファクタリングの強みです。
② 審査に時間がかからない
金融機関から融資を受ける場合、審査に長い時間を要することがほとんどです。一方、ファクタリングは、売掛債権と取引先の情報のみを審査するため、早ければ即日に現金化できます。手数料はかかりますが、一刻も早く資金が必要な際の資金調達方法として有効と言えるでしょう。
③ 未回収のリスクを回避できる
万が一、取引先が倒産して売掛金を回収できなかった場合、大きな損失となってしまいます。特に期日現金は回収サイトが長いため、未回収のリスクが高いのです。取引先が倒産して売掛金が未回収となれば、自社の資金がなくなり連鎖倒産も起こりかねません。
しかし、ファクタリング会社に売掛金を売却すれば、ファクタリン会社から現金を受け取れるため、未回収リスクを回避できます。また、日本のファクタリング会社は償還請求権のない「ノンリコース」の会社が原則です。つまり、未回収リスクはすべてファクタリング会社が負うため、取引先が倒産しても利用企業に支払う義務は発生しないということになります。
④ 2社間であれば利用の事実を知られることがない
2社間であれば、利用企業とファクタリン会社のみで取引を行うため、取引先にファクタリング利用の事実を知られません。ファクタリングは多くの場合、資金繰りが悪化した際に利用されるため、経営不振を疑われないためにも取引先には知られない方が良いでしょう。2社間であれば、取引先に知られることなく素早く現金化し、資金繰りの改善を図れます。
支払いを先延ばしするには「請求書カード払い」がおすすめ
取引先への支払い期日を先延ばしにするには、期日現金の他に請求書のカード払いも有効です。
支払いを先延ばしするには「請求書カード払い」がおすすめ
請求書のカード払いとは?
請求書カード払いとは、請求書の支払いをクレジットカードで決済できるサービスです。取引先から請求書を受け取った後、サービス上に振込先口座や振込金額などを入力してクレジットカードで決済し、代行会社が利用企業名義で取引先へ銀行振り込みをしてくれるという仕組みです。後日、請求金額と手数料がクレジット決済によって利用企業の口座から引き落とされます。
請求書のカード払いのメリット
後払いサービスのメリットは4つあります。
① クレジットカードさえあれば即日利用できる
代行会社にもよりますが、クレジットカードさえあれば即日利用可能です。現金が手元になくても支払いを完了でき、資金繰りの改善につながります。また、クレジットカードを利用した後払いサービスのため、大企業が運営していることから安心して利用できるでしょう。
② 事前の申し込みや審査・保証人や担保が不要
普段から利用している法人カードやビジネスカードを使用するため、事前の申し込みや審査・保証人や担保が不要です。銀行などの金融機関の場合は審査に時間がかかるうえ、融資してもらえるとは限りません。カードの利用限度額を超えた決済はできませんが、与信枠内の範囲なら必要な金額を支払えます。
③ 少ない手数料で利用できる
ファクタリングと比較して少ない手数料で利用できます。手数料が少ないことから利益を圧迫しません。手数料を抑えられるだけでなく、請求書カード払いの利用によって支払管理を一元化できる点や、クレジットカードの利用ポイントが貯まる点もメリットと言えるでしょう。
④ 取引先に利用の事実を知られることがない
代行会社が利用企業名義で取引先へ銀行振り込みを行うため、取引先に請求書カード払いサービスを利用していることを知られません。取引先がクレジットカード非対応でも、請求書カード払いであればクレジットカード決済が可能です。
請求書のカード払いなら「支払い.com」がおすすめ
請求書のカード払いなら「支払い.com」がおすすめです。支払い.comは、法人向けクレジットカード事業を手掛けるUPSIDERがクレディセゾンと共同運営しているサービスです。期限の迫った請求書も、支払い期限を最大60日間延長できます。クレジットカードさえあれば、書類提出や審査、面談は不要で、Webでユーザー登録をするだけで即日利用可能です。諸経費込みの手数料は一律4%となっています。個人事業主から1,000名を超える法人様まで、豊富な実績を誇っています。利用ステップは以下のとおりです。
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まとめ
期日現金の概要やメリット・デメリット、受け入れるべきかの判断基準について解説しました。期日現金は、締日から90日や120日など支払いサイトが長く設定されている売掛金の決済方法です。
支払側は資金繰りに余裕が生まれますが、受取側は回収サイトが長くなることで資金繰りが悪化するリスクがあります。取引先から期日現金を持ちかけられたら、まずは下請法に接触しないかを確認し、自社の運転資金と照らし合わせて慎重に検討しましょう。資金繰りの改善を図るのであれば、「支払い.com」をぜひご検討ください。