近年、資金調達の新たな手段としてファクタリングが注目されています。ファクタリングを利用するには担保が必要だと思っている経営者の方もいるのではないでしょうか。
ファクタリングは融資と異なり担保は不要で、自社の信用能力が低くても資金調達できるのが大きな魅力です。本記事では、ファクタリング利用のメリットと利用の流れを解説します。
ファクタリングとは担保なしで利用できる資金調達方法
銀行などの金融機関から資金調達を行う場合、不動産などの担保が必要になるケースもあります。しかし、がファクタリングは担保がなくても、資金を調達できる方法です。
ファクタリングとは売掛債権をファクタリング会社に売却することで本来の期日よりも前に資金を調達する仕組みで、金融機関からの融資と違って借り入れではありません。このため、担保がなくても資金調達が可能です。
売掛債権の金額から手数料が差し引かれるものの、融資のように返済する必要がないことも特徴の1つです。
また、担保が必要ない分、ファクタリングでは細かい審査が行われません。担保が必要な融資は申し込み~資金化までに2週間~4週間ほどかかることもめずらしくありませんが、ファクタリングは即日入金に対応してもらえるケースも多いです。
ファクタリングとは担保なしで利用できる資金調達方法
手形割引との違い
手形割引は決済期限がくる前に受け取った手形を金融機関へ売却して現金化する方法で、ファクタリングとよく似ています。手数料はファクタリングよりも安いのが特徴です。
しかし、もしも売却した手形が不渡りになった場合、持ち込んだ企業が手形振出人の代わりに決済しなければならなくなる「償還請求権」があります。
一方、ファクタリングには償還請求権がないため、仮に、請求先の企業が支払いできなかったとしても肩代わりしなければならないといったことはありません。この点が、手形割引と大きく異なります。
また、そもそも手形割引は手形がないと利用できません。
売掛債権担保融資(ABL)との違い
売掛債権を使った資金調達には「売掛債権担保融資」もあります。ABL融資とも呼ばれ、売掛債権を担保にして金融機関から融資を受ける資金調達方法です。ファクタリングとは異なり、あくまでも融資なので返済しなければなりません。
たとえば、住宅を担保にして住宅ローンを組むのと同じ考え方です。
融資には審査が必要で時間がかかるため、ファクタリングのようにすぐに現金を手にすることはできません。
ファクタリングで現金化できる上限は請求書の金額となりますが、売掛債権担保融資は売掛債権に価値があると判断されれば高額融資を受けられるのが特徴です。
ファクタリングには2つの種類がある
ファクタリングには2つの契約方法があります。
ファクタリングには2つの種類がある
ファクタリングの種類1:買取型
買取型は売掛金(未入金の請求書)を売却して、支払い期限が来る前に現金化する仕組みとなっています。「売掛金の売却」のため、ファクタリング会社から買取額が入金されれば取引終了です。
また、もしも売掛先の企業が支払わなかったとしても、売掛金の所有権はファクタリング会社に移っているため未回収のリスクはありません。
ファクタリングは手数料が差し引かれるため満額を現金化できませんが、未回収のリスクがないのは大きなメリットです。
なお、ファクタリングといえば買取型を指すことが一般的です。
ファクタリングの種類2:保証型
保証型は買取型とは異なり、売掛先の倒産などによる「未回収リスクの回避」を目的としたファクタリングです。もしも売掛金が回収できない場合、ファクタリング業者が売掛金を保証してくれる保険だと考えるとよいでしょう。
したがって、売掛先企業の信用力によっては利用できないこともあります。
保証型のファクタリングの利用には利用料が発生するため、無事に売掛金が回収できれば利用料が無駄になってしまう点はデメリットです。
ファクタリングの仕組みとは
ファクタリングには「2者間」と「3者間」の契約方法があります。それぞれの仕組みを理解した上で利用しましょう。
ファクタリングの仕組みとは
2者間ファクタリングの仕組み
2者間ファクタリングとは、自社とファクタリング会社の間で契約する方法です。
ファクタリングを利用しても売掛先の企業にわからないメリットがある一方、3者間ファクタリングに比べ手数料が高く設定されています。
しかし、売掛先企業にファクタリングの利用を知られた場合、今後の取引に影響が出る可能性もあるため、大きなメリットとなるでしょう。
2者間ファクタリングを利用する流れは以下の通りです。
- 申し込み
- ファクタリング会社による売掛金の内容や売掛先の信用力調査
- 契約
- ファクタリング会社から買取代金が振り込まれる
- 支払期日に売掛先から入金された金額をファクタリング会社へ支払う
3者間ファクタリングの仕組み
3者間ファクタリングは法務局で「債権譲渡登記」を行うことが一般的なため、売掛先企業の合意が必要です。
そのため、2者間ファクタリングに比べ入金までに時間がかかります。
債権譲渡登記を行う理由は、債権がファクタリング会社に譲渡されたことを証明するためです。
債権譲渡手続きを行うことで、売掛先はファクタリング会社へ請求金額を支払います。
3者間ファクタリングの手順は以下の通りです。
- 申し込み
- ファクタリング会社による売掛金の内容や売掛先の信用力調査
- 契約
- 売掛先企業にファクタリング利用の合意を得る
- ファクタリング会社から買取代金が振り込まれる
- 支払期日に売掛先がファクタリング会社へ入金する
担保なしでファクタリングを利用するメリット
担保なしで資金調達ができるファクタリングには多くのメリットがあります。
担保なしでファクタリングを利用するメリット
担保・保証人なしで資金調達できる
金融機関からの融資は担保や保証人が必要になることが多く、担保となる不動産などがない企業は融資を受けることが困難になる場合があります。
一方、ファクタリングは、まだ入金されていない発行済みの請求書さえあれば利用できるため、担保や保証人は必要ありません。
そのため、資金調達がしやすいのがファクタリングの特徴です。
負債が増えない
融資の場合、会計処理上は負債として計上しなければなりません。
しかし、ファクタリングは借入金とは異なり、売掛金(資産)から手数料(経費)が引かれて現金(資産)として返ってきます。ファクタリングは「売買契約」や「譲渡契約」として扱うため、負債にはなりません。
そのため、負債が増えないメリットがあります。
資金をスピーディに調達できる
融資の場合は審査があるため、融資実行までに最低1ヶ月はかかることも少なくありません。
しかし、ファクタリングは請求書売買契約であるため、審査に時間がかからないことが特徴です。
早ければ30分程度で審査が完了し、数時間で資金調達ができる場合もあります。
申し込みから契約までをWEBで完結できることも多く、店舗に行かなくてもよいため素早い現金化が可能です。
売掛先の倒産リスクに対応できる
ファクタリングでは売掛金の未回収リスクをなくすことが可能です。
ファクタリングでは売掛金を譲渡した時点で、所有権がファクタリング会社に移るため、償還請求権や買取請求権はありません。そのため、売掛先からの入金がなかったとしても、自社がファタリング会社に代金を支払う必要はありません。
- 償還請求権:売掛先の企業が倒産などで支払いができなくなった場合、申込者に対し売買代金の返金を請求できる権利。
- 買取請求権:入金がなかった場合は売掛債権の買い戻し請求をできる権利。
自社の信用度が低い状態でも利用しやすい
金融機関からの借り入れの場合、赤字や債務超過などで自社の経営状態が悪く信用度が低いと、審査に通らないことがほとんどです。
一方、ファクタリングは売掛先の信用情報が重視されるため、自社の経営内容が資金調達に影響しません。ファクタリング会社は請求書を購入しているわけですから、売掛先の支払い能力が重要なのです。
ただし、逆に言えば、売掛先の信用度が低い場合は買い取ってもらえないこともあるので注意が必要です。
業種・業態に関係なく利用できる
ファクタリングには業種や業態の制限はありません。請求書さえあれば資金調達が可能です。
中でも、製造業や建設業などは売掛金が発生しやすい業界のため、ファクタリングを利用する企業が多い傾向です。
飲食店のように売掛金が発生しにくい業界でも、リニューアルや設備投資の資金として利用するケースも少なくありません。
法人だけでなく、個人事業主も契約できる
金融機関からの融資の場合、信用力の低い個人事業主は利用できないこともありますが、ファクタリングは個人事業主でも利用が可能です。
ただし、売掛先が法人でなければ利用ができないこともあるので注意が必要です。
個人事業主向けに少額から対応しているファクタリング会社もあるので、対応しているファクタリング会社を探してみてください。
ファクタリングで資金調達するデメリットとは
ファクタリングの利用には、デメリットもあります。デメリットを理解した上で利用しなければ、かえって資金繰りが悪化しかねません。
ファクタリングで資金調達するデメリットとは
手数料が割高な場合がある
ファクタリングには手数料が発生します。買取型はもちろん、保証型でも保証料が発生するため、どちらの取引も売掛金の全額を現金化できるわけではありません。
また、振り込み手数料を負担しなければならないこともあるため、手数料が高すぎると手元に残る現金が少なくなり、利益の減少につながります。
依存するとかえって資金繰りが悪化する
上記で解説した通り、売掛金の満額が現金化できないため、ファクタリングに依存しすぎると資金繰りが悪化する可能性があります。
そのため、通常よりも多くの費用が突発的に発生したときに限定して利用するなど、ファクタリングに頼りすぎないことが重要です。
便利だからといって、むやみに利用することは避け、慎重に判断しましょう。
悪徳業者を見極める必要がある
多くのファクタリング会社がありますが、中にはファクタリング業者を装った悪徳業者も存在します。
たとえば、ファクタリングと見せかけて実際には融資を行っている偽装ファクタリングや、手数料が他社に比べて高すぎるファクタリング業社などです。
このような悪徳業者を利用すると契約書にはない費用を請求されることや高額な請求をされることがあるため業者は慎重に選ぶ必要があります。
金融庁からも注意喚起されている内容なので、十分気を付けてください。
ファクタリングの手数料相場はどれくらい?
ファクタリングを利用するには手数料が発生します。
手数料は2者間ファクタリングと3者間ファクタリングで異なるのが一般的です。目安としては、2者間が10%〜20%、3者間が1%〜9%となっています。
手数料はファクタリング業者によって異なるため、複数の見積もりをとって比較しましょう。
担保なしのファクタリングの利用がおすすめのシーンとは
ファクタリングは急に大きな支払いが発生するときに使うと有効です。ファクタリングが活用されるケースを紹介します。
担保なしのファクタリングの利用がおすすめのシーンとは
従来よりも大規模な案件を受注できるチャンスがきた場合
大きなプロジェクトの話が急に舞い込むことや大型受注があるなど、大きなビジネスチャンスのときは多額の資金が必要になるケースがあります。融資の場合は実行までに時間がかかり、資金作りが間に合わずチャンスを逃してしまうかもしれません。
しかし、ファクタリングなら素早い現金化が可能で、すぐに決済できるためチャンスをつかめる可能性があります。
業績不振などで融資を受けることが難しくなった場合
金融機関からの融資は経営状態が悪くなると融資額が減らされることや、最悪の場合融資が受けられなくなる可能性があります。融資を受けられなくなっても、人件費や仕入れなどの支払いは止められません。
仮に融資を受けられなくなった場合でも、ファクタリングで売掛金を即日現金化すれば、支払いに充てることが可能です。
売掛金の入金が遅れることが分かった場合
取引先の売掛金が入ることを見越して仕入れなどをしているケースもあるのではないでしょうか。そのような場合、もし売掛金の入金が遅れれば予定した支払いができなくなってしまいます。
支払いを待ってもらうことも可能ですが、今後の取引に影響しかねないため、できれば避けたいところです。このようなときにもファクタリングは活用できます。
ファクタリングの一般的な利用手順を解説
次に、一般的なファクタリングの利用手順を解説します。
ファクタリングの一般的な利用手順を解説
ファクタリング会社に相談する
ファクタリングの利用にあたって、まずは事前に売掛債権を買い取ってもらえるか相談しましょう。相談は複数の業者に行い、手数料や契約内容(償還請求権や買取請求権の有無)を確認することをおすすめします。
また、3者間ファクタリングを利用する場合は、売掛先の承諾が必要になるため、ファクタリング会社から連絡が行く前に、了承してもらいましょう。
売掛先に何も伝えていないと、ファクタリング業者からの連絡で利用が判明し、売掛先を不安にさせてしまうことにもなりかねません。
利用申込をする
利用申込は窓口に行く方法や電話、WEBからの申し込みなどがありますが、インターネットを利用した方が早く申し込みできるのでおすすめです。ほとんどのファクタリング業者がWEBでの申し込みに対応しています。
ただし、一度申し込むとキャンセルできないこともあるため、あらかじめ見積もりをとり、サービス内容をよく確認した上で申し込みましょう。
契約してから悪徳業者だったことがわかった、という場合もあるので、極端に手数料が高くないかどうかや利用者の口コミなどの確認をおすすめします。
必要書類を提出する
ファクタリングの申し込みにはいくつかの書類の提出が必要です。利用前にホームページなどで必要書類の確認をしておきましょう。一般的に必要な書類は以下の通りです。
- 身分証明書
- 請求書
- 入出金明細書(銀行口座など)
- 取引先との契約内容がわかる書類
ファクタリング業社によっては他の書類を求められることもあります。
提出書類が多いと準備が面倒ですが、悪徳業者のように信頼できない業者ほど簡単な手続きを売りにしているため、提出書類が少なすぎる場合は注意が必要です。
審査が行われる
審査ではファクタリング会社のリスクや、優良な取引相手かどうかが判断されます。審査内容は以下のような項目が中心です。
- 売掛先の信用力(最も重要)
- 請求書の支払期日(期限が迫っているものが好まれる)
- 架空の売掛金など不正な契約ではないか
早ければ30分程度で審査結果がわかります。
契約を締結する
必要書類を提出すれば、最終的な契約となります。契約を結ぶ際には契約内容をよく確認し、不明な点があれば担当者に質問しましょう。
なお、契約の際にヒアリングがありますが、自社の経営内容や提出書類に嘘がないかなどを確認されます。一般的に、聞かれる内容は次のようなものです。
- ファクタリングの目的
- 売掛先について
- 3者間取引の場合は承諾を得ているか
以上を確認され、双方に問題がなければ契約の締結となり、現金が入金されます。
担保なしで利用できるおすすめのファクタリング会社3選
どのファクタリング会社を利用したらよいか迷っている方におすすめのファクタリング会社を3社紹介します。わかりやすく表にまとめましたのでぜひ参考にしてください。
業者名 | 手数料 | 入金スピード | 買取限度額 |
ビートレーディング | 2%〜12% | 最短2時間 | 制限なし |
ベストファクター | 2%〜20% | 1,000万までは最短1時間 | 30万円〜1億円 |
QuQuMo | 1%〜14.8% | 最短2時間 | 制限なし |
3社とも優良なファクタリング会社ですが、手数料や限度額などが異なるため、相見積もりをとって自社に合ったファクタリング会社を選ぶことをおすすめします。
詳しく内容は以下を参照してください。
ビートレーディング
調達までの最短時間 | 2時間 |
---|---|
手数料 | 2%〜 |
限度額 | 無制限 |
契約方法 | 対面・オンライン |
必要書類 | 2点(請求書など・過去2ヶ月分の通帳のコピー) |
ビートレーディングはファクタリング会社の老舗で、58,000社の取引実績があります。(2024年3月確認時点)
特徴は「注文書ファクタリング」に対応しているため、請求書を発行する前の段階でも現金化できることです。提出書類も2点だけなので、できるだけ早く現金化したい企業におすすめします。
ベストファクター
調達までの最短時間 | 1時間 |
---|---|
手数料 | 2%〜20% |
限度額 | 無制限 |
契約方法 | 電話・オンライン・出張訪問 |
必要書類 | 4点(身分証明書・見積書・請求書・通帳) |
ベストファクターは審査が柔軟で手数料も低めに設定されており、継続利用でさらに手数料が下がる特典があります。今後もファクタリングを利用したいと考えている企業にもピッタリです。
30万円から申し込みが可能で1,000万円までならオンラインで完結ができます。
QuQuMo
調達までの最短時間 | 2時間 |
---|---|
手数料 | 1%〜14.8% |
限度額 | 無制限 |
契約方法 | オンライン |
必要書類 | 2点(請求書・通帳) |
QuQuMoはスピーディかつコストを抑えて資金調達したい企業におすすめです。書類の提出から契約まで完全オンラインのためファクタリングの利用を誰にも気づかれません。
スマホからでも利用できるため忙しい事業主におすすめです。手数料も1%からとなっており、最短2時間で現金化できます。
まとめ
ファクタリングは売掛金を売却することで現金化し、資金調達を行う手法です。
審査されるのは売掛先の企業であるため、融資枠が埋まっていたり債務超過だったりで金融機関からの借り入れが難しい企業でも利用できます。現金化のスピードも早く、最短で時間以内に現金が入金されるためスピーディに資金繰りを改善できるでしょう。
利用のポイントは「ファクタリングに依存しすぎないこと」と「複数社から見積もりをとること」です。ファクタリングは手数料を差し引いて現金化されるため、依存しすぎると利益が少なくなります。
本記事で紹介した3社は安心して利用できるファクタリング業社なので、利用を検討している事業主の方は相談してみてください。