資金繰りの改善にクレジットカード決済が有効なことをご存知でしょうか。税金や公共料金、通信費、備品の購入などをクレジットカードで支払うことで、支払期限を翌月以降に延長できるため資金繰りの改善が可能です。銀行振込みの請求書の支払いをクレジットカードで決済できるサービスもあります。クレジットカードを有効活用して、効率的に資金繰りの改善を図りましょう。
この記事では、クレジットカードで資金繰りを改善するために知っておきたい情報をまとめてご紹介します。
クレジットカードで資金繰りを改善できる理由
クレジットカードの利用料金は翌月以降の請求になるため、支払いのタイミングを先送りにできます。
支払期限を延長できることで手元に現金を残しておけるため、資金繰りの改善に役立てられるのです。
クレジットカード決済ができる支払いの例として、以下が挙げられます。
- 申告所得税
- 復興特別所得税
- 消費税
- 地方消費税
- 法人税(連結納税を含む)
- 地方法人税(連結納税を含む)
- 水道光熱費
- 通信費
- 事務用品
- ガソリン代
- 高速道路料金
- 旅費交通費
- 交際接待費
- 福利厚生費
- 新聞図書費
- 会議費(会議室の使用料)
ただし、国税の納付については、以下の3点に注意する必要があります。
- 領収書は発行されない
クレジットカードで国税を納付した場合、領収書は発行されません。領収書が必要な場合は、金融機関や所轄の税務署の窓口で納付します。 - 決済手数料がかかる
クレジットカード納付をする場合、納付税額に応じて以下のように決済手数料がかかります。
納付税額 | 決済手数料(税込) |
---|---|
1円~10,000円 | 83円 |
10,001円~20,000円 | 167円 |
20,001円~30,000円 | 250円 |
30,001円~40,000円 | 334円 |
40,001円~50,000円 | 418円 |
- 国税の納付はインターネットのみ
金融機関やコンビニエンスストア、税務署の窓口ではクレジットカードによる納付はできないため、注意しましょう。クレジットカードによる納付ができるのは、「国税クレジットカードお支払サイト」のみで、パソコンやスマートフォンから手続きを行うことになります。
クレジットカードによる国税の納付の詳細は国税庁の「クレジットカード納付のQ&A」をご確認ください。
月末締め翌月末払いに関しては、「建設業の資金繰りはどうすべき?」から関連記事をご覧ください。
請求書の支払いもクレジットカード決済できる!
請求書の支払いをクレジットカードで決済できる「請求書カード払い」というサービスもあります。このサービスは、支払代行サービスの一種で、受け取った銀行振込の請求書をクレジットカード決済に切り替えることが可能です。支払いを先延ばしにして資金繰りに余裕ができる点が最大の強みとなっています。
請求書払いとの違いは、いつでもどこでも決済できる点と、一定の期間内であれば支払いを先延ばしにできる点です。請求書払いは、銀行の取引時間内に振り込む必要があり、支払いの延長もできません。請求書カード払いを利用すれば、請求書払いのデメリットを払拭できるのです。
請求書カード払いの仕組み
請求書カード払いの仕組みは以下のとおりです。
- 取引先から請求書を受け取ったあとに、請求書カード払いサービスのサイトにて、振込先口座や振込金額、希望する振込人名義などの必要項目を入力します。
- 振込金額と請求書カード払いサービスの利用手数料を手持ちのクレジットカードで決済します。
- 請求書カード払いサービス事業者が指定された振込人名義で取引先へ銀行振込を行います。(取引先にはサービスの利用を知られません)。
- 後日、請求書の請求金額とサービス利用手数料が口座から引き落とされます。
資金繰り改善以外のクレジットカードのメリット
ここでは、クレジットカードを使用するメリットを解説します。
資金繰り改善以外のクレジットカードのメリット
経費精算を効率化できる
経費をクレジットカード決済する最大のメリットは、経費精算を効率化できる点です。クレジットカードで経費を支払えば、まとめて法人口座からの経費精算ができるようになります。従業員用に追加カードを発行しておけば、個々の従業員出張費や交通費、接待交際費などに使用可能です。
その結果、立替精算や小口現金が不要になり、経費精算を効率化できます。法人カードのなかには、カードの利用履歴と経費精算システムを連携できるものもあるため、活用すれば会計処理の負担がさらに軽減されるでしょう。経費精算システムの活用は、業務効率化だけでなく、ヒューマンエラーを予防する役割も果たします。
経費を削減できる
経費の支払いをクレジットカードに一本化すれば、指定口座からまとめて自動的に引き落とされるため振込手数料がかかりません。国税に関しては決済手数料がかかるものの、その分ポイントが付与されます。各種支払いに法人カードを利用することでポイントが貯まり、貯まったポイントを事務用品の購入や交通費などに充当できます。
法人カードの付帯サービスを活用すれば、低価格で福利厚生を充実させられる点も強みです。また、こちらは経費ではありませんが、前述のように経費精算業が効率化されることで、経理担当者の残業が減り、残業代の削減が期待できます。このように、法人カードを有効活用することで経費の削減につながるのです。
ポイントを活用できる
クレジットカードの利用額に応じてポイントを貯められます。貯まったポイントは、備品の購入やギフトとの交換に充てられる点もメリットです。従業員の追加カードを複数発行している場合でも、親カードにポイントをまとめられます。ただし、法人カードのポイントの還元率は個人カードと比較して低い傾向にあるため、カードを選ぶ際にポイントの還元率を比較検討するようにしましょう。
ポイントはマイルへの交換も可能です。飛行機を使う出張が多い業種であればマイルが貯まる法人カードを選ぶことをおすすめします。その際にチェックしておきたい項目は以下です。
- マイル還元率
- マイル移行手数料
- マイル移行上限数
- マイル移行可能な航空会社
国内および海外の空港ラウンジを利用でき、海外旅行傷害保険・国内旅行傷害保険などが付帯サービスに入っているかも確認しておきましょう。また、自動付帯なのか利用付帯なのかもチェックポイントとなります。
ガバナンス強化につながる
そもそもガバナンスとは、企業経営において公正な判断および運営がなされるよう監視・管理・統制する仕組みのことです。すなわち、「健全な企業経営を行うための管理体制」を指します。企業の信頼向上のために欠かせない仕組みです。コンプライアンスの徹底やリスクマネジメントなど、ガバナンスの強化施策は多岐にわたります。
従業員が会社のお金を不正利用しないように予防することもガバナンスの一環です。法人カードを導入する場合、従業員個人と企業の支払いを明確に分けられるため、ガバナンス強化につながります。「誰が」「いつ」「どこで」「何に」使用したのかも利用履歴によって可視化でき、不適切な利用を防止し、不要な経費の洗い出しも可能です。企業の経理がより透明化される点も、経費をクレジットカードで決済するメリットと言えます。
クレジットカードで資金調達する方法
ここでは、クレジットカードで資金調達する方法について解説します。
クレジットカードで資金調達する方法
キャッシングによる資金調達
そもそもキャッシングとは、クレジットカードに付帯している、ATMなどから現金を借りられる機能のことです。キャッシング枠(利用限度額)は、クレジットカード作成時に設定します。なお、キャッシング枠を超える借入はできません。
借入方法は、クレジットカードで直接現金を引き出す、または電話などで依頼して指定口座に振り込んでもらう、などです。返済方法は、カード利用料とあわせて引き落とされますが、ATMや振込みで返済することもできます。少額の現金が必要な場合は、クレジットカードのキャッシング機能を利用することも選択肢のひとつとして考えておくと良いでしょう。
キャッシングする際の注意点
キャッシングで資金調達する際に、いくつかの注意点があります。注意点を把握したうえで、利用するかどうかを検討しましょう。
キャッシング枠がある法人のクレジットカードが少ない
多くの法人カードは、個人カードと異なりキャッシング枠が備わっていません。法人の場合、利用者が倒産や自己破産に陥る可能性があり、お金が回収できなくなる貸倒れリスクが高くなるためです。キャッシング機能が備わっている法人カードもありますが、貸し倒れリスクが少ない個人事業主向けだったり、借入できる金額が少額だったりする傾向にあります。
従って、キャッシングは多額な事業資金が必要な場合の資金調達方法としては適していないでしょう。クレジットカードは、あくまでも支払いのタイミングを先延ばしにして資金繰りを改善する手段と認識しておく必要があります。
利息が高い
キャッシングの利率は借入金額や利用期間によって設定されるため、利息が非常に高くなる場合があります。特に少額の借り入れは、利息が高く設定される傾向にあるため注意しなければなりません。少額の現金のために多額の利息を支払うほど、キャッシングする必要に迫られているのか、ほかの資金調達方法はないかよく検討してください。
現金が不足したらキャッシングを利用するという方法を繰り返すと、雪だるま式に借金が増え、かえって資金繰りが悪化してしまいます。キャッシングで借入をする前に必ず利率を確認しておきましょう。
審査が厳しくなる場合がある
法人カードは、キャッシング機能を付けると発行審査が厳しくなる場合があります。クレジットカード会社は、利用者の倒産や自己破産による貸倒れリスクをできるだけ避けようとするためです。また、法人カードではあまり一般的ではないキャッシング機能を付けることで、経営状態が良くない印象を与えかねません。審査が厳しくなることで、審査が通らなかったり、落ちてしまったりする可能性があることも留意しましょう。
キャッシング機能を付けることで、「いざというときはキャッシングすればいい」という思考になりがちになる点も懸念点です。最初からキャッシング機能を付けていなければ、そもそもキャッシングによる資金調達は選択肢に入りません。キャッシング機能を付けてしまったばかりに、少額の現金の借り入れを繰り返してしまう可能性もあるのです。
利用上限額は低めに設定されている
前述のとおり、キャッシングの利用上限額は低めに設定されています。数十万円しか借り入れできないことも多く、利息ばかり高くついてしまうのです。利息が高くてもすぐに少額の現金が必要で、利息が大きくなる前に返済できるのであればキャッシングもひとつの手段かもしれません。しかし、多額の借入が必要な場合や、短期間で返済できる見込みがない場合は、金融機関からの融資を検討した方が良いでしょう。
キャッシングの利用上限額は数十万円程度で、事業資金をまかなえるような額ではないことを念頭に置いてください。
請求書を支払うための現金が不足している場合は、前述した「請求書カード払い」を利用しましょう。「支払い.com」であれば少額の手数料で支払い期限を最長60日まで延期できます。利用上限額は、手持ちのクレジットカードの上限額が適用されるため、多額の支払いであってもカードの上限額さえ余裕があれば利用可能です。
法人でクレジットカードを利用する際の注意点
法人カードを適切に利用するために、5つの注意点を知っておきましょう。
法人でクレジットカードを利用する際の注意点
利用規定を定める必要がある
法人カードの使いすぎや不正利用を防ぐためにも、必ず利用規定を定めておかなければなりません。具体的には、カード決済する経費項目や金額を限定し、一定のカード決済を事前承認制にするなどです。ルールが明確化されていないと、従業員によって使い方が異なったり、経費以外のものに使ったりする可能性があります。
自分1人で事業を行っている個人事業主や追加カードを持たない法人代表者も、自戒の念を込めて利用規定を定めておくようにしましょう。利用規定に強制力を持たせるためにも、万が一、違反した場合のペナルティも定め、周知しておくことが重要です。利用規定が形骸化しないように、すぐに確認できる状態にしておくこともポイントとなります。
追加カードを発行すると管理の手間が増える
追加カードの枚数に伴い、暗証番号や明細などの管理の手間が増えます。また、盗難・紛失リスクが高まる点にも注意しなければなりません。追加カードの発行枚数は最小限にとどめ、従業員が利用するときのみ貸し出すようにすることで、管理負担や盗難・紛失リスクを軽減できるでしょう。
万が一、不正利用や盗難・紛失が起こった場合に迅速かつ適切な行動をとれるように、対応方法を決めておくことも重要です。対応方法についてもマニュアル化し、法人カードに関わるすべての従業員に周知を徹底しておく必要があります。
従業員同士での使い回しはできない
法人・個人を問わずクレジットカードを使用できるのは名義人のみのため、従業員同士での使い回しはできません。法人カードの使い回しが発覚すれば、規約違反となりカード会社から利用停止処分を受ける可能性もあるのです。事業主が法人カードを従業員に渡し、備品の購入をさせたり、出張時に使用させたりすることも、名義人以外の使用に該当するため規約違反となります。
従業員同士でカードの使い回しをしないように周知を徹底しておきましょう。また、結婚や離婚で従業員の苗字が変わった場合は速やかに名義の変更手続きをする必要があります。担当者が退職や異動した場合は、当該追加カードの解約手続きを行ってください。
利用控えや領収書の保管が必要
法人カードで決済した際に発行される利用控えや領収書はすべて保管しておきましょう。取引で発生した見積書や発注書なども保管しておくと安心です。これらの書類は通常の経理作業では必要ありませんが、万が一、税務調査の対象となった場合に役立つ可能性があります。いざというときのために、すぐに提出できる状態で保管・管理しておくと良いでしょう。
なお、クレジットカードの利用明細書は、クレジットカードが発行するものであり、支払を受けた店舗や取引先が発行したものではないため、「正式な領収書」としては使用できない点に注意してください。
二重計上に注意する
二重計上とは、売上や経費で同じ項目を誤って2回計上してしまうことです。クレジットカード決済では、領収書やクレジット売上票、利用明細書など複数の書類を受け取ることが多いため、二重計上しないように注意する必要があります。
誤って二重計上してしまった場合は、修正申告をしなければなりません。二重計上は税務上のペナルティが大きいことから、早期の修正が求められます。適切に対処するためにも、税理士に相談することを推奨します。
クレジットカードと「支払い.com」で請求書払いを先延ばししよう!
光熱費や税金の支払い、備品の購入などをクレジットカード決済にすれば、支払いのタイミングを先送りにでき、資金繰りの改善を図れます。クレジットカードを事業用に限定して使用するなら、法人カードがおすすめです。
法人カードを活用すれば、経費精算の効率化やポイントの活用、ガバナンスの強化が可能になります。ただし、キャッシング枠がないものが多いため、資金調達方法としては適していません。
一方で、「支払い.com」であれば、請求書払いをクレジットカードで最長60日間先延ばしできるため、借入せずに資金繰りの改善が可能です。