安定して事業を運営していくためには、運転資金の確保が重要です。運転資金が不足し資金ショートを引き起こすと倒産の恐れもあるため、不足しそうなときは、何らかの方法で資金調達しなければなりません。当記事では、運転資金を借り入れできる金融機関をご紹介します。あわせて融資を受けやすくするポイントも解説するので、資金調達を検討している方は参考にしてみてください。
運転資金を借り入れできる主な金融機関
安定した事業運営を実現するには、必要十分な運転資金の確保が重要です。
事業所・工場・店舗などの家賃や、従業員の人件費を始めとした「固定費」は毎月かかります。加えて、事業拡大時には仕入れ費用や外注費などの「変動費」も増加するため、より一層潤沢な運転資金を確保しなければなりません。
運転資金を始めとした事業性資金の確保は、金融機関等の融資を受けて行うのが一般的です。運転資金を借り入れできる主な金融機関等には、下記のものが挙げられます。
金融機関 | 借り入れのしやすさ | 金利 | 借入限度額 | |
---|---|---|---|---|
民間金融機関 | 銀行 | やや借りにくい (審査が厳しい) | 低い | 一定の限度額はない (高額な借入も可能) |
信用金庫 | 借りやすい | 銀行より高い | 銀行より低い | |
政府系金融機関 | 日本政策金融公庫 | やや借りやすい | 低い | 小規模事業者:平均1,000万円中小企業:平均1億3,000万円 |
日本政策投資銀行 | やや借りにくい(大企業向け) | 契約条件による | 一定の限度額はない | |
商工組合中央金庫 | 借りやすい | 低い | 一定の限度額はない | |
ノンバンク系 | 消費者金融 | 借りやすい | 非常に高い | 低い(数十万~数百万) |
信販会社 | 借りやすい | やや高い | 消費者金融より高い(数百万~一千万) | |
クレジットカード会社 | 借りやすい | 低い | 低い(数十万) |
民間金融機関
融資を受ける際、一番に思いつくのが銀行を始めとした民間金融機関の融資ではないでしょうか。民間金融機関には都市銀行・地方銀行・信用金庫・信用組合、信託銀行などがあります。ここでは、最も馴染み深く、広く一般に融資を行っている銀行と信用金庫について見ていきましょう。
銀行
私たちにとって馴染み深い銀行はさまざまな金融商品を取り扱っており、事業を運営していくためには必須の存在です。日本貸金業協会の「年次報告書(JFSA白書)」によると、経営者・個人事業主のおよそ54.2%が事業性資金の借入先として銀行を選択しています。
銀行と直接契約し会社の信用に基づき融資を受ける「プロパー融資」は、低金利で大規模な資金調達ができるというメリットがある一方、審査が非常に厳しいという点が大きなデメリットです。また、多くの場合で会社の代表者を連帯保証人に設定する必要があり、融資金額によっては不動産を始めとした担保の提供も求められます。
銀行の融資についてまとめると、下記の通りです。
借り入れのしやすさ | やや借りにくい |
---|---|
審査の厳しさ | 非常に厳しい |
返済期間 | 中長期(5~7年) |
金利 | 低い(1.0~3.0%) |
借入限度額 | 一定の限度額はない |
創業間もない小規模事業者など、自社の信用力が低くプロパー融資を受けられない場合は、信用保証協会の「保証付融資」を利用する方法もあります。信用保証協会とは、融資に際して信用保証を提供し、万が一返済不能に陥った場合は債務の80~100%を代理で返済してくれる一般社団法人です。
信用保証協会の信用保証を利用すると圧倒的に審査が通りやすくなるメリットがある一方、経営状況に応じた一定の信用保証料を追加で負担しなければならない点はデメリットとなります。また、信用保証協会による審査が必要となるため、融資実行までに時間がかかる点には注意が必要です。
信用金庫
融資を受ける際、銀行に次いで一般的な金融機関が信用金庫です。前述の「年次報告書(JFSA白書)」では、銀行に次ぐ33.6%の経営者・個人事業主が事業性資金の借入先として信用金庫・信用組合を選択しています。
なお、銀行と信用金庫の違いですが、銀行は利益を優先した営利企業であるのに対し、信用金庫は地域住民との相互扶助による地域社会の発展を目的とした金融機関です。
主な取引先は会員である地域住民や中小企業であるため、銀行に比べると審査が優しく小規模事業者でも融資を受けやすい金融機関となっています。一方、銀行より金利が高めで、借入限度額も低めに設定されている点はデメリットといえるでしょう。
信用金庫の融資についてまとめると、下記の通りです。
借り入れのしやすさ | 借りやすい |
---|---|
審査の厳しさ | 銀行より優しい |
返済期間 | 中長期(5~7年) |
金利 | 銀行より高い(2.0~5.0%) |
借入限度額 | 銀行より低い |
大規模な資金調達が必要な場合、信用金庫の融資では希望額に満たない可能性もあるため気をつけましょう。なお、信用金庫から融資を受ける際も銀行と同様に信用保証協会の保証を付けることが可能です。
政府系金融機関
銀行・信用金庫などの民間金融機関と並んで、事業運営に欠かせないのが政府系金融機関です。
日本国内の経済発展や中小企業の支援を目的に政府が出資して設立・運営されている政府系金融機関には、日本政策金融公庫・日本政策投資銀行・商工組合中央金庫・国際協力銀行・沖縄振興開発金融公庫の5つがあります。
今回は日本政策金融公庫・日本政策投資銀行・商工組合中央金庫の3つにスポットを当て、それぞれの特徴やメリット・デメリットについて見ていきましょう。
日本政策金融公庫
これから事業を始められる方、事業を始めて間もない方、個人事業主や中小企業の方には、日本政策金融公庫の融資がおすすめです。日本政策金融公庫は、一般的に資金調達の難しい個人事業主や中小企業などを対象に、民間金融機関の金融を補完することを目的としたさまざまな金融商品を提供しています。
日本政策金融公庫は、事業を始める際の創業資金や事業運営に必要な運転資金の貸し付けも積極的に行っており、前述の「年次報告書(JFSA白書)」では30.5%の経営者・個人事業主が事業性資金の借入先として利用している金融機関です。
無担保・無保証人で借り入れできる融資制度があり、金利も低いというメリットがある一方、審査には比較的時間がかかるというデメリットもあります。
日本政策金融公庫の融資についてまとめると、下記の通りです。
借り入れのしやすさ | やや借りやすい |
---|---|
審査の厳しさ | 比較的優しい |
返済期間 | 中長期(5~7年) |
金利 | 低い(0.3~3.5%) |
借入限度額 | 小規模事業者:平均1,000万円 中小企業: 平均1億3,000万円 |
創業間もない小規模事業者など、担保に提供できる不動産や保証人に設定する人的担保が乏しい場合は、後ほどご紹介する「新創業融資制度」を利用することで、無担保・無保証人で融資を受けられます。
ただし、日本政策金融公庫で融資を受ける場合は原則、希望融資額に対し10分の1の自己資金が必要となるため気をつけましょう。
日本政策投資銀行
日本政策投資銀行は、民間金融機関の補完を目的に、経営再建やインフラ整備、大規模災害などへの対応にかかわる長期資金の供給を行う政府系金融機関です。日本政策金融公庫との違いは、個人事業主や中小企業など小規模事業者を対象とした小口融資を中心に扱う日本政策金融公庫に対し、日本政策投資銀行は中堅企業や大企業を対象とした大口融資を中心に扱っています。
大規模かつ長期的な資金調達が可能な点はメリットですが、中堅企業や大企業に対する大規模融資が中心で個人事業主や中小企業は利用しにくいという点がデメリットです。小規模事業者は、前章でご紹介した日本政策金融公庫のほうが利用しやすいかもしれません。
日本政策投資銀行の融資についてまとめると、下記の通りです。
借り入れのしやすさ | やや借りにくい |
---|---|
審査の厳しさ | 比較的厳しい |
返済期間 | 契約条件による |
金利 | 契約条件による |
借入限度額 | 一定の限度額はない |
日本政策投資銀行は、一般的な融資以外にもストラクチャードファイナンス(仕組み融資)、アセットファイナンス、シンジケート・ローン、ABL(Asset Based Lending:動産・債権担保融資)など、さまざまな金融商品を扱っています。社会情勢の急変などで打撃を被った事業者に対し低金利で危機対応融資を行うケースもあるため、小規模事業者であっても一度公式Webサイトを確認してみましょう。
商工組合中央金庫
商工組合中央金庫は、中小企業の活性化を目的とした政府系金融機関です。日本政策金融公庫との違いは、個人事業主や中小企業など広く一般の小規模事業者を対象に融資を行う日本政策金融公庫に対し、商工組合中央金庫は中小企業団体(商工中金株主団体)とその構成員である中小企業に対してのみ融資を行います。比較的金利が低く融資を受けやすいというメリットがある一方、中小企業団体の構成員でなければ融資を受けられないのがデメリットです。
また、必要に応じて保証人が必要で、創業時の融資や個人事業主に対する融資は行っていません。商工組合中央金庫の融資についてまとめると、下記の通りです。
借り入れのしやすさ | 借りやすい |
---|---|
審査の厳しさ | 比較的優しい |
返済期間 | 運転資金:10年 設備資金:15年 |
金利 | 低い |
借入限度額 | 一定の限度額はない |
借入限度額に一定の上限がなく、運転資金でも最長10年の長期借入が可能なため、中小企業団体に加入さえできれば利用価値の高い金融機関といえるでしょう。
ノンバンク系
ノンバンクとは、お金を預かる預金業務を行わず、融資を行う与信業務のみに特化した金融機関です。消費者金融・信販会社・クレジットカード会社が3大ノンバンクといわれています。
ここでは、ノンバンク系金融機関の概要やメリット・デメリットについて見ていきましょう。
消費者金融
消費者金融はサラ金とも呼ばれ、一般消費者を対象とした小口融資を行う貸金業者です。個人向けのイメージが強い消費者金融ですが、事業者向けにビジネスローンも提供しています。
保証人や担保は原則不要で審査も優しく、最短即日で融資を受けられるというメリットがある一方、金利が非常に高いという点が大きなデメリットです。
また、借入限度額も銀行などの融資に比べるとはるかに低く設定されています。
消費者金融のビジネスローンについてまとめると、下記の通りです。
借り入れのしやすさ | 借り入れしやすい |
---|---|
審査の厳しさ | 優しい |
返済期間 | 短期~中期(数ヶ月~数年) |
金利 | 非常に高い |
借入限度額 | 低い(数十万~数百万) |
消費者金融のビジネスローンは金利が非常に高いため、中長期の借り入れには向いていません。銀行などの融資と併用し、急な資金調達に限り利用するのが得策です。
信販会社
信販会社とは、信用を供与しさまざまな信用取引を行うノンバンク系金融機関です。例えば、ローンを組んで商品を購入するショッピングローンやショッピングクレジットを利用したことがある方も多いかもしれません。
消費者金融との違いは、一般消費者を対象とした小口融資を中心に行う消費者金融に対し、信販会社は代金の立て替えを主な業務として行っています。消費者金融は「貸金業法」、信販会社は「割賦販売法」の適用を受けるのが原則です。
ただし、貸金業の登録を受けてビジネスローンや信販系クレジットカードを提供している信販会社も多くあります。消費者金融に比べ借入限度額が高い点はメリットですが、銀行に比べるとやや金利が高い点はデメリットです。
信販会社のビジネスローンについてまとめると、下記のようになります。
借り入れのしやすさ | 借り入れしやすい |
---|---|
審査の厳しさ | 優しい |
返済期間 | 中長期(5~10年) |
金利 | やや高い |
借入限度額 | 消費者金融より高い(数百万~一千万) |
信販会社のビジネスローンは中長期の資金調達が可能ですが、金利がやや高いため長期借入すると負担も大きくなる点に注意が必要です。利用する場合は、銀行の融資などと併用して必要最低限の資金を短期間だけ借り入れるよう心がけましょう。
クレジットカード会社
クレジットカード会社は、私たちにとって馴染み深いクレジットカードの発行に特化した会社です。信販会社とは業務範囲が異なり、信用供与に基づきさまざま信用取引を行う信販会社に対し、クレジットカード会社は原則としてクレジットカード業務のみ行っています。ノンバンクが発行するクレジットカードを利用した「ノンバンク系カードローン」は、事業性資金に転用することが可能です。
簡単に利用できて金利も低い点はメリットですが、返済期間が短く借入限度額も低い点はデメリットです。
ノンバンク系カードローンについてまとめると、下記のようになります。
借り入れのしやすさ | 借り入れしやすい |
---|---|
審査の厳しさ | 優しい |
返済期間 | 短期(数日~数ヶ月) |
金利 | 低い |
借入限度額 | 低い(数十万) |
なお、銀行などが発行したクレジットカードによる「銀行系カードローン」は、原則として事業用途への流用が認められていないため気をつけましょう。
運転資金を借り入れする必要があるケースとは?
冒頭でもお伝えしたとおり、安定して事業を運営するためには、運転資金の確保が重要です。ここでは、運転資金を借り入れする必要のあるケースをご紹介します。
運転資金を借り入れする必要があるケースとは?
つなぎ資金が必要なとき
運転資金を借入する最も代表的なケースが、「つなぎ資金」が必要になったときです。
日本では、商品を先に引き渡して代金を後で受け取る「掛取引」が一般的に行われています。掛取引では商品の販売と代金の受け取りにタイムラグが発生するため、代金を受け取る前に支払いが必要となった場合にはつなぎ資金が必要です。
運転資金が不足し資金繰りが悪化すると、黒字倒産に陥る恐れもあります。支払いが先行する場合は、つなぎとして運転資金を借入する必要があるのです。
事業を拡大するとき
事業が拡大している場合にも、運転資金の借入が必要となるケースがあります。
例えば、売り上げが伸びているときは、原材料費などの仕入れ費用や販管費なども増えるのが一般的です。売り上げが増加しているときは、平常時以上の運転資金を確保しなければなりません。また、生産性向上のため設備投資を行ったり、追加で従業員を雇ったりする必要もあります。
事業を拡大する際は、必要に応じて「増加運転資金」を借入する必要があるのです。
季節性資金が必要なとき
季節要因で売り上げが増減する事業の場合は、季節性資金を確保する目的で運転資金の借入が必要となるケースもあります。
例えば、クリスマスやお正月、サマースポーツやウィンタースポーツなどの商品を扱っている場合、繁忙期に向けて十分な資金を確保しなければなりません。逆に、閑散期も事業を継続するには、運転資金が必要です。一般的な企業でも、ボーナスを支給するため人件費が増加する時期などが該当します。
季節性資金が必要なときは、「季節運転資金」を借入する必要があるのです。
借り換えしたいとき
借入が必要なその他のケースとしては、「借り換え」をしたいときが挙げられます。
借り換えとは、ある金融機関から借入をして、他の金融機関の借入金を一括返済することです。返済が一本化できるため管理の手間が省け、より低金利で借入ができれば負担を抑えられる、というメリットがあります。
金利の高い借入がある場合は、借り換えをするのも一つの方法です。
必要な運転資金の目安とは?
必要な運転資金は、掛取引における売掛金と買掛金の差額によって決まります。
具体的には、下記の計算式によって求めることが可能です。
運転資金=売掛金+在庫-買掛金
■各項目の定義
- 売掛金:商品は既に引き渡したものの取引先からまだ受け取っていない代金
- 在庫:仕入れ・製造はしたもののまだ販売していない商品や原材料
- 買掛金:商品や原材料は仕入れたもののまだ取引先に支払っていない代金
例えば、売掛金が200万円、在庫が50万円、買掛金が100万円のケースでは、150万円(200万円+50万円-100万円)の運転資金が必要です。まだ回収できていない売掛金や、販売していない在庫が多ければ多いほど、必要な運転資金も多くなります。
運転資金におすすめの資金調達方法一覧
冒頭では運転資金を借入できる金融機関をご紹介しました。ここからは、特におすすめの資金調達方法をご紹介します。
運転資金におすすめの資金調達方法一覧
請求書のカード払いで支払期限を延長
請求書の支払いをクレジットカードで決済する、いわゆる「請求書のカード払い」を利用することで、支払期間の延長が可能です。
例えば、代表的なサービスである「支払い.com」を利用すれば最長60日間、請求書の支払いを先延ばしにできます。資金繰りを改善するには、支払いをなるべく先延ばしにすることが重要です。請求書をカード払いすることで、簡単に支払いの先延ばしができます。
ファクタリングの利用
ファクタリングとは、掛取引における売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらい、現金化するサービスです。従来、売掛債権は支払期日まで現金化できませんでしたが、ファクタリングを利用することで期日を待たずに現金化できます。
金銭消費貸借契約に基づく融資ではなく売買契約による買い取りなので、返済の必要もありません。売掛債権の信用に基づき買い取りが行われるため、自社の信用に問題があっても利用できます。
一定の買取手数料がかかるのはデメリットですが、簡単な審査で最短即日現金化できるため、急な資金調達などには最適です。
日本政策金融公庫の新創業融資制度
個人事業主や中小企業にとって強い味方となる日本政策金融公庫ですが、創業間もない小規模事業者などに特におすすめなのが「新創業融資制度」です。「創業融資」という個別の融資があるわけではなく、既存の融資を無担保・無保証人で利用できる制度となっています。
対象となるのは、新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方です。融資限度額は、併用する融資の限度額にかかわらず3,000万円(うち運転資金1,500万円)となります。
不動産や人的担保を持たない方は、積極的に利用するとよいでしょう。
日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金
社会経済の変化などで経営が苦しい方には、「経営環境変化対応資金(セーフティーネット貸付)」がおすすめです。
対象者は、外的要因により一時的に業況が悪化しているものの、中長期的には回復し発展することが見込まれる方となっています。資金使途は設備資金および運転資金で、融資限度額は4,800万円です。
税務申告を2期以上終えている方でも無担保・無保証人で利用できる融資制度もあるため、業況が厳しい方は利用を検討してみましょう。
金融機関のプロパーローン
金融機関のプロパーローンとは、信用保証協会の信用保証を利用せずに銀行が独自で設定する融資です。
法人の信用のみに基づくため、個人事業主や創業間もない小規模事業者の利用は難しいかもしれません。審査は非常に厳しく、場合によっては不動産などの担保も必要です。
利用するのは大変ですが、プロパーローンは低金利で、大規模かつ中長期の資金調達が可能であるため、事業拡大を目指す場合は積極的に申し込んでみるとよいでしょう。
なお、プロパーローンの審査が通ったこと自体が信用に繋がるため、他の融資も受けやすくなるというメリットもあります。
信用保証協会の制度融資
プロパーローンが難しい場合は、信用保証協会の制度融資を利用するのもよいでしょう。
制度融資とは、地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して提供する融資制度です。融資自体は地元の金融機関が行いますが、信用保証協会は信用保証の提供を、地方自治体は信用保証料の一部補助や貸付資金の一部預託を行います。
一定の信用保証料は負担しなければなりませんが、金利が低く審査のハードルも下がるため、信用に乏しい小規模事業者にはおすすめの資金調達方法です。
ノンバンク系のビジネスローン
ノンバンク系のビジネスローンは、サラ金のイメージからあまり良い印象を持っていない方も多いかもしれません。しかし、現在は法整備が進み、安心して利用できる資金調達方法となっています。例えば、いわゆるグレーゾーン金利などが撤廃されたことは大きな前進です。
ただし、ノンバンク系のビジネスローンは金融機関のプロパーローンなどと比べると依然として金利が高いため、借りすぎには注意しましょう。担保や保証人は原則不要、簡単な審査で最短即日融資を受けられるため、急な資金調達にはおすすめの方法です。
融資を受けやすくするポイント
会社の規模や信用力の問題から、融資を受けづらく資金調達に苦労した経験のある方も多いかもしれません。ここでは、融資を受けやすくする6つのポイントをご紹介します。
融資を受けやすくするポイント
事業計画書を入念に作成する
融資の審査においては、現在の業況だけでなく、将来の事業計画が非常に重視されます。継続的に儲けを生み出す発想や戦略をまとめた「事業計画書」をしっかりと作成することで、融資に値する事業であること、リスクが低いことをアピールしましょう。
なお、事業計画書には事業内容や経営計画だけでなく、資金繰りについても説得力のある計画が必要です。
借り入れの目的を明確化する
融資を受ける際には、借り入れの目的を明確化することも重要です。
融資の審査では、「何のために(資金使途)」「いくら(融資資金)」必要なのかが重視されます。漠然とした目的では、資金の流用を恐れて金融機関は融資を行わないのが一般的です。
運転資金の融資を受ける場合は、いくら融資を受ければ事業を継続もしくは拡大できるということを客観的に明示するよう心がけましょう。一時的に資金繰りが悪化しつなぎ資金が必要な場合でも、売掛金の入金があれば確実に返済できることをアピールすれば問題ありません。
経営者個人の信用情報にも気を配る
一般的な融資では、人的担保として経営者を連帯保証人に設定することが多いです。そのため、経営者個人の信用情報に問題があると、融資を受けられない可能性があります。
例えば、経営者がいわゆる金融ブラック状態では、融資を受けるのは難しいかもしれません。融資の審査では経営者個人の信用情報も重視されるため、クレジットカードやローンの返済を延滞しないなど、日頃から気を配るように心がけましょう。
必要な金額だけ借り入れする
融資を受ける際は、必要な金額だけ借り入れしましょう。なぜなら、借り入れの目的を上回る融資額を希望すると、資金の流用を疑われて審査が厳しくなるからです。
前述の通り、融資の審査では「何のために・いくら」資金が必要なのかが重視されます。融資を受けるなら多めに借りておきたい方も多いかもしれませんが、使用目的に照らし合わせて必要十分な金額だけを希望するように心がけましょう。
返済計画を明確化する
融資を受ける前に、返済計画を明確化しておくことも重要です。
将来のお金の流れを整理する「資金繰り表」を作成し、売掛金の入金と買掛金の支払いのタイミングを確認してください。入金と出金のサイクルを可視化し、滞りなく返済していけることをアピールしましょう。
なお、返済期間が長くなると金利負担がかさむため、なるべく短くすることが重要です。また、完済前に別の融資を受ける必要が生じた場合は審査が厳しくなる恐れがあるため、なるべく早く返済するよう心がけましょう。
必要な書類は漏れなく準備する
融資に必要な書類を、漏れなく準備することも大切です。融資を受ける際は、多数の書類を提出しなければなりません。一般的な融資で提出を求められる主な書類は、次の通りです。
- 事業計画書
- 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 決算書(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など)
- 資金繰り表
- 資金使途資料
- 納税証明書
- 印鑑証明書
- 借入申込書など
非常に多くの書類が必要となるため、漏れやミスがないよう余裕をもって準備してください。なお、融資が確定すると融資金額に応じた収入印紙が必要となります。追加で印紙代がかかる、ということを覚えておきましょう。
融資を受ける際の注意点
最後に、融資を受ける際に注意しなければならない3つのポイントをご紹介します。運転資金の融資を受ける場合は、事前に把握しておきましょう。
融資を受ける際の注意点
運転資金以外の用途に使わない
運転資金として融資を受けた資金は、他の用途に流用できません。
一般的に、事業性資金は「運転資金」か「設備資金」のいずれかの用途として融資を受けますが、例えば運転資金として借りた資金を設備資金に流用することは規約違反です。
資金使途違反を犯すと、金融機関との信頼関係が損なわれて以後の融資が難しくなったり、一括返済を求められたりする恐れがあります。貸し倒れリスクの増加などで、金融機関はとにかく資金使途違反を嫌うため、絶対に行わないように注意しましょう。
1つの用途で融資枠を使い果たさない
融資を受ける際には、必ず金融機関から融資限度額が提示されます。例えば、事業拡大に必要な増加運転資金などのために限度額いっぱいまで融資を受けることはやめましょう。
なぜなら、運転資金は増加運転資金以外にもつなぎ資金や季節運転資金なども必要となるからです。1つの用途で融資枠を使い果たしてしまうと、他の用途で必要な資金を調達できなくなってしまいます。
運転資金の融資を受ける場合は、1つの用途で融資枠を使い果たさないよう注意しましょう。
資金繰り表を作成して早めに融資を受ける
融資を受けるには、審査などのため一定の時間がかかります。融資の実行を待つ間に支払いが先行すると、運転資金が不足し資金ショートを引き起こしてしまうかもしれません。最悪のケースでは、黒字倒産に陥ってしまう恐れもあります。
最悪の事態を回避するためにも、資金繰り表を作成して入金と出金のタイミングを可視化し、運転資金が不足しそうなときは早めに融資を申し込みましょう。もしくは、「請求書のカード払い」を始めとした早急に資金調達できるサービスを利用するのも一つの方法です。
「支払い.com」を利用し運転資金を確保しよう
今回は運転資金を借り入れできる金融機関をご紹介しました。融資といえば銀行を連想される方が多いかもしれませんが、政府系金融機関やノンバンク系金融機関など、さまざまな借入先から融資を受けることが可能です。
借入先によって借入上限額や金利、融資実行までの期間、融資の難易度が異なります。希望融資額や資金使途に合った借入先から融資を受けることが重要です。なお、融資を受けるには一定の時間がかかる場合もあります。
急な資金調達が必要となった場合は、「支払い.com」のような後払いサービスの利用もおすすめです。資金繰りが悪化しそうなときは、支払い.comで運転資金を確保しましょう。